「初心に返り問題検証を」=患者・遺族代表の緒方さん―水俣病公式確認70年



「初心に返って、問題を検証し直す年にしてほしい」。水俣病犠牲者慰霊式で患者・遺族代表として「祈りの言葉」を読み上げた認定患者の緒方正実さん(68)=熊本県水俣市=は、公式確認から70年を前に取材に応じ、思いを語った。

緒方さんは1957年12月、不知火海に面する同県芦北町で生まれた。一家はカタクチイワシ漁などをなりわいとしていたが、59年9月、同居していた祖父が急性劇症型水俣病を発症し、2カ月後に苦しみながら他界。胎児性患者として生まれた二つ下の妹を含め、親族20人以上が次々と発病した。

県が60年に実施した調査では、緒方さんの毛髪からも高濃度のメチル水銀が検出された。根強い偏見や差別を恐れて長く認定申請できずにいたが、95年に国が未認定患者に対する「政治解決」をまとめ、翌年から一時金の支給などを開始。意を決して申請したが、対象外とされた。

周囲からは「金が欲しくて申請しているのか」などと冷たい言葉も聞こえてきたが、異議申し立てを繰り返し、2007年3月にようやく患者認定された。長い闘いの支えになったのは、「正直な人間であれ」と願って「正実」と名付けてくれた祖父の存在だ。「せっかく孫を思って命名してくれた祖父を裏切るわけにはいかない。私の心の中で祖父は生き続けている」と話す。

チッソの工場排水に含まれる有機水銀が原因とする政府統一見解が示された日付に合わせ、同年9月26日から水俣病資料館(水俣市)の語り部になった緒方さん。13年には資料館を訪問された在位中の上皇ご夫妻にも講話するなど、水俣病の実情を伝え続けている。

〔写真説明〕水俣病公式確認70年を前に記者会見する緒方正実さん=4月12日、熊本県水俣市の水俣病資料館

2026年05月02日 07時09分


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