
最大震度7を観測した熊本地震の被災地で、生成AI(人工知能)を支援に役立てる動きが目立ち始めている。避難者が自ら生活情報の掲示板を開発したり、災害対応で忙殺される自治体職員の負担を軽減したり。一方で、SNSでは偽映像も拡散し、最新技術の功罪が浮き彫りになった。
熊本県御船町で被災した加悦美里さん(38)は、家族で身を寄せた避難所でスマートフォンから生成AIを操作し、被災者向け生活情報掲示板「イマココナビ」を開発した。営業再開した店や炊き出しの場所といった地元の情報を住民同士で即座に共有できるサイトで、着想からわずか数時間で公開にこぎ着けたという。
「情報が必要な人に届いていない状況をもったいないと感じ、開発を思い立った。10年前の地震のときAIは使えなかったが、今はアイデアを簡単に形にできる」と語る加悦さん。サイトは既に16万人超が利用し、被災者の生活再建に役立てられている。
被災自治体の職員らもAIを活用している。熊本県デジタル戦略推進課の担当者は「地震前から議事録や説明資料の作成などに活用しており、もはやないと困るレベル。災害対応でも、職員の業務負担を軽減することで、丁寧に対応すべき案件に集中できる」と話す。
ただ、AIは災害時に助けになるばかりではない。今回の地震では、イオンモール熊本(嘉島町)の爆発事故の映像に見せ掛けた偽の動画がSNSで拡散。AIで生成されたものとみられ、報道機関のニュース映像を装ったものもあった。
AI技術に詳しい国立情報学研究所の越前功教授(情報セキュリティー)は「この1、2年で生成AIの精度は飛躍的に進化し、信頼性も便利さも高まってきた。一方で、低確率で誤った回答をしたり、悪用されたりする恐れはある」と指摘。「生成映像かどうかを見抜くのはもはや難しい。投稿者が信頼できる情報源かどうかを確認することがこれまで以上に重要になる」と話している。
〔写真説明〕スマホに表示された被災者向け生活情報掲示板「イマココナビ」を見せる開発者の加悦美里さん(本人提供)
〔写真説明〕生成AIで開発した被災者向け生活情報掲示板「イマココナビ」の画面=7日、熊本市中央区
2026年08月08日 14時33分