
81年前、広島と長崎に投下された原爆は町を破壊し、多くの命を奪った。その惨禍を次世代に伝えるため、東大大学院の片山実咲さん(27)は、仮想空間でブロックを使い町や建物を作るゲーム「マインクラフト」を通じ、被爆前の町を再現する取り組みを進める。片山さんは「ゲームをきっかけに原爆で失われたものを想像して」と訴える。
平和教育を研究する片山さんは、2023年から広島や長崎でマインクラフトを使ったワークショップを開催。対象は小学4~6年で、被爆前の地図や写真、動画を参考に町を作ってもらう。同年8月4、5日に広島市であったワークショップでは、爆心地近くに建つ平和記念公園にかつてあった寺院や幼稚園などを再現してもらった。
開催のきっかけは、6年前に被爆者から聞いたある言葉だ。「原爆が公園の上に落ちて良かったですね」。平和学習で同公園を訪れた小学生はそう感想を述べたという。
「人が住まない公園に落ちたのは不幸中の幸い」という趣旨で子どもらしい感想とも言えるが、公園がある場所はかつて市内有数の繁華街だった。片山さんは「長い年月がたち、投下前を想像できない時代になっている」と感じた。
ワークショップは2日間で、初日は投下前の町に関する情報収集や設計図の作成、実際の組み立てを行う。参加者は「作るのは大変だが、なくなるのは一瞬」と感じ、原爆による喪失を自分のこととして捉えることができる。
翌日は、原爆投下直後の被爆者の写真を見たり、被爆者からの講話を聞いたりしてもらう。投下前後両方への理解が深まることで、自分が作った町がどう変わったのか、具体的にイメージすることができるという。
ただゲームを使った平和教育には難しさもある。建物作りに夢中になり、本来の目的を見失う人も出てくるためだ。ワークショップ前に黙とうをささげるなどの工夫もするが、片山さんは「十分な準備や運営体制がなければ、被爆者に失礼な内容になる」と語る。
今年のワークショップは10、11日に長崎市で開催予定という。片山さんは「デジタル技術で被爆前に対する想像が広がり、当時の町や人に思いをはせることができる。ワークショップが原爆について考えるきっかけになれば」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕ゲーム「マインクラフト」を活用し平和学習のワークショップを行う、東大大学院の片山実咲さん=7月11日、東京都文京区
〔写真説明〕ゲーム「マインクラフト」を活用し平和学習のワークショップを行う、東大大学院の片山実咲さん=7月11日、東京都文京区
〔写真説明〕ゲーム「マインクラフト」を活用し平和学習のワークショップを行う、東大大学院の片山実咲さん=7月11日、東京都文京区
2026年08月07日 07時04分