
イタリアの夜空へ鮮やかに舞い上がり、明るく照らされた雪面に完璧に着地した。スノーボード男子ビッグエアの木村葵来(21)=ムラサキスポーツ=の3回目。大歓声を浴びながら両手を広げ、「勝ったなって思った」。表彰台の頂点に立った。
1回目は横5回転半の「バックサイド1980」を危なげなく決めた。しかし、2回目の空中技は着地が乱れて転倒。次も失敗なら上位の望みが消える中、3回目で普段と逆のスタンスで背中側に踏み切る横5回転半を成功させた。この日最高の90.50点をマーク。「(喜びが)爆発して、頭が真っ白だった」。後続の選手が上回れず、うれしそうに金メダルを首から下げた。
昨季はどん底にいた。オフシーズンに負った右足首の靱帯(じんたい)損傷のけがを引きずり、ワールドカップ(W杯)は1度だけ3位に入ったが低調。日本の女子が表彰台を独占し、男子が金、銀を獲得した世界選手権では、木村葵はただ一人の予選落ちに終わった。「やめてしまいたいと思った。何しているんだろう、という感じだった」。支え続けてくれた両親からは私生活のことも含めて指摘され、自暴自棄になった。
ただ、2014年ソチ大会を見て憧れた五輪を諦めるわけにいかなかった。「負けず嫌いが出た。誰よりも強くなりたいと思った」。スノーボードを始めた頃のことを思い出して気持ちを切り替え、オフシーズンの取り組みをすぐに計画。体幹や筋力の強化など、基礎から見直した。着地の安定感などにつながり、今季W杯は2位が2度。苦境からはい上がり、夢舞台に立った。
スノーボードは父の影響で4歳から始めた。並行して中学1年まで続けたのが体操。「運動能力を高めるためか、習わされていた」と笑うが、今ではそこで培った空中感覚が完成度の高い技につながっている。
W杯や世界選手権など、主要な世界大会ではこれまで1勝もしていない。それでも、注目された日本勢の中だけでなく、世界のトップに。「表彰台の真ん中は高かった。気持ちよかった」。苦しみも経験してつかんだ頂点。言葉に実感がこもった。
【時事通信社】
〔写真説明〕スノーボード男子ビッグエア決勝、3回目の木村葵来=7日、リビーニョ
〔写真説明〕スノーボード男子ビッグエア決勝、3回目を終え喜ぶ木村葵来=7日、リビーニョ
〔写真説明〕スノーボード男子ビッグエア決勝、3回目を終えた木村葵来=7日、リビーニョ
〔写真説明〕スノーボード男子ビッグエアの表彰式で金メダルを掲げる木村葵来=7日、リビーニョ
2026年02月08日 10時47分