
ミラノ・コルティナ五輪での熱戦を終えて2週間足らず。数々の金字塔を打ち立てた高木が、現役生活に終止符を打つことを決めた。31歳。日本のエースとして君臨し続けた名選手がリンクを去る。
世界でも屈指のオールラウンダーとして名をはせた。2018年平昌五輪からの3大会で、10個ものメダルを集めたのが象徴的だ。「誰もが多くの種目に出場したいと思うが、肉体的にも技術的にもできない。彼女こそキング・オブ・スケートだ」と評するのは、長野五輪男子500メートル金メダリストの清水宏保さん。類いまれな才能は、トップ選手にとっても羨望(せんぼう)の的だった。
3000メートルも含めた5種目を戦った北京五輪後、自らの体の変化を感じ取るように。「今まで無意識にできていたことができなくなってきた。変わらなければならない」。30代で迎えるミラノ・コルティナ五輪を見据え、新たな滑りを模索し続けた。「次はこうしようかな、と考えることはそんなにしんどくはない」。己と格闘する日々は、時に楽しくも思えた。
高木はスケートに限らず、日常の気付きまでノートやパソコンに小まめにメモしてきた。「書くという行為を、頭の中の整理をするための強い手段として持っている」。小学生の頃から考え抜くことが習慣となり、その姿は時に「求道者」とも表現された。
体力の衰えにもあらがったこの4年間は、より思索を深めた日々を過ごした。悲願の金メダル獲得を目指したミラノ・コルティナ五輪の1500メートルは6位。失意を味わいながら、レース後の表情はどこかさっぱりして見えた。「悔しい部分もあるが、頑張ってきたなという思いはある」
長い競技人生の引き際と定めた大会は、スケート大国オランダで開催される世界選手権。「残りの期間も変わらずに、スケートに向き合い続け、高みへ挑みにいく」。満員となることが予想される会場で、高木の魅力が詰まったオールラウンド部門で最後の勇姿を示す。
【時事通信社】
〔写真説明〕W杯スケート女子1500メートルを世界新で制し、ガッツポーズする高木美帆=2019年3月、米ソルトレークシティー(EPA時事)
2026年03月04日 14時33分