【キーウ時事】ウクライナの首都キーウ(キエフ)では、ロシアによる侵攻開始から3年近くたった今も空襲警報が連日鳴り響く。戦時下でも「笑いと喜びを届けたい」と活動を続けているのが、ウクライナ国立サーカスだ。「芸術性の高い演目を常に準備し、公演し続ける」との強い思いで、団員一丸となって逆境に立ち向かっている。
侵攻当初は爆発音などでサーカスの動物がおびえ、団員らが泊まり込みで世話をした。公演中に空襲警報が鳴れば、団員や観客はシェルターへの避難を余儀なくされる。
困難は多いが、国立サーカスのウラジスラフ・コルニエンコ総裁(61)は「戦争が続く中、われわれの重要な任務は国立サーカスを存続させ、ウクライナのサーカス芸術の伝統を継承していくことだ」と力を込める。週末を中心に公演を行い、侵攻後も毎年新しい演目を追加。昨年はフランスでの公演も成功させた。
日本と縁があるサーカス関係者も国立サーカスの活動を支える。1990年代末に日本で「五人囃子(ばやし)」という女性のクラウン(道化師)グループのプロデュースを手掛けた演出家ウラジーミル・クリューコフ氏(77)。「こんな戦争は必要ない。人々にユーモアが足りていない」と嘆き、主にオンライン形式で若手の指導に当たる。
日本でウクライナの「サーカス人」を支える動きも起きている。クリューコフ氏の長年の友人であり、サーカス学会会長でノンフィクション作家の大島幹雄さん(71)らは2022年4月、「クラウンパレード」というプロジェクトを始動した。「笑いで平和を」と訴え、ユーチューブチャンネル開設のほか、首都圏で毎年道化師らによるチャリティー公演を行い、収益はウクライナの団体に寄付する。
今年の公演は4月5日に東京都墨田区のホールで開催。大島さんは「笑いで一つになるという旗を掲げ続けていきたい。侵攻開始から3年となるが、応援しているという気持ちを伝えたい」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕ノンフィクション作家の大島幹雄さん
〔写真説明〕リハーサルを行うウクライナ国立サーカスの団員たち=12日、キーウ
〔写真説明〕ウクライナ国立サーカスの建物=12日、キーウ
〔写真説明〕ウクライナの演出家クリューコフ氏(左)と国立サーカスのコルニエンコ総裁(右)=12日、キーウ
2025年02月22日 13時31分