トランプ氏、対ロ融和にかじ=停戦仲介へ前のめり―政権内部に混乱も



【ワシントン時事】1月に発足した第2次トランプ米政権は、ロシアのウクライナ侵攻に対する米政府の方針を180度転換し、対ロ融和にかじを切った。トランプ大統領は停戦交渉の仲介に意欲を示し、ロシアとの直接協議を開始。しかし、ロシアに秋波を送る形で停戦を急ぐ姿勢は、危うさをはらんでいる。

「われわれはウクライナに関し、彼ら(バイデン前政権)が3年間で達成した以上の進歩を成し遂げた」。トランプ氏は今月21日、ロシアのプーチン大統領と停戦交渉開始で合意したことを自賛した。

トランプ氏はロシアと関係正常化を図る一方、ウクライナのゼレンスキー大統領への非難を強めている。特にゼレンスキー氏を「選挙なき独裁者」と呼び、「戦争を始めるべきではなかった」と主張したことは、国内外で波紋を広げた。

就任前はウクライナでの紛争を「24時間以内に終わらせる」と豪語していた。しかし、水面下での交渉は実を結ばず、ウクライナのレアアース(希土類)獲得を巡る交渉も合意に至っていない。ゼレンスキー氏への根拠に乏しい批判は、いら立ちの裏返しでもある。

見え隠れするのは、民主主義の価値観よりも経済的利益を重視する考えに加え、停戦を何としても実現させたいという功名心だ。ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)は「欧州で戦争を終わらせ、中東でも終わらせる。そしてトランプ氏はノーベル平和賞を受賞するだろう」とトランプ氏が抱く野望を代弁した。

一方で、トランプ氏の急激な路線転換は、政権内部の混乱も招いている。ヘグセス国防長官が米軍のウクライナ駐留を否定した直後にバンス副大統領は「米軍派遣も選択肢だ」と表明するなど、ちぐはぐさが目立っている。

また、停戦仲介を担うはずだったケロッグ特使(ウクライナ・ロシア担当)の代わりに、腹心のウィトコフ中東担当特使が対ロ交渉チームに起用され、政権内部の力学にも変化が生じている。政治専門紙ポリティコによると、トランプ氏周辺は伝統的な同盟関係を重視する共和党タカ派を邪魔者と見なしており、ケロッグ氏のほか、過去に対ロ強硬路線を示していたルビオ国務長官やウォルツ氏も「ホワイトハウス内で厳しい目にさらされている」という。

米世論もトランプ氏のロシア傾斜に危惧を抱いている。米キニピアック大の今月の世論調査では、有権者全体の81%が「プーチン氏を信用すべきではない」と回答。「信用できる」は9%にとどまった。

【時事通信社】 〔写真説明〕トランプ米大統領=21日、ワシントン(EPA時事)

2025年02月24日 08時08分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース