【ベルリン時事】23日投開票のドイツ連邦議会選挙では、移民排斥を訴える極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が議席を伸ばし、第2党に躍進する見通しだ。既存メディアがAfDを批判的に扱う中、SNSを駆使して支持を広げ、トランプ米政権の中枢からも後押しを受けている。
「(民主主義において)防火壁の余地はない」。バンス米副大統領は14日、訪独中のミュンヘン安全保障会議での注目演説で、独政界において極右との協力を拒否する方針を指す「防火壁」を批判し、AfDへの実質的な支持を表明した。AfD首相候補のワイデル共同党首の公式X(旧ツイッター)は即座に反応し、「素晴らしい演説だ!」という文言とともにドイツ語字幕付の演説動画を投稿。これまでに180万回再生された。
AfDは「ドイツ国民のアイデンティティーの維持」を最重要課題に掲げ、移民受け入れや、環境・多様性重視などの革新的な政策を根本的に拒絶。公安組織「憲法擁護庁」から過激派の疑いで監視されている。
こうした中、AfDはメディアによる事実確認や取捨選択の及ばないSNSに党勢拡大の活路を見いだした。市場調査会社ネッツシュライヤーが全連邦議会議員のXや短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」などのフォロワー数を党ごとに調べたところ、議席数は5番目にとどまるAfDが計672万人で、最多だった。
急増する難民への対応や再生可能エネルギーへの転換でつまずく現政権をAfDは激しく攻撃し、政権批判票の受け皿になってきた。さらにワイデル氏は、トランプ大統領盟友の米実業家イーロン・マスク氏やハンガリーのオルバン首相など他国の要人との接触に力を注ぎ、有権者のAfDに対する抵抗感を弱める戦略を取った。
AfDの党組織に詳しいトリアー大学のアンナ・ゾフィーハインツェ研究員(政治学)は「AfDはオンラインでも直接対面の場でも動員に成功し、ますます『正常な』政党だと認識されつつある。AfD以外の選択肢がないと考える支持者が多く、他党とは逆に固定支持層が増える傾向がある」と分析した。
【時事通信社】
〔写真説明〕ドイツ極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のワイデル共同党首=13日、ベルリン(EPA時事)
2025年02月23日 07時11分