【ソウル時事】韓国大統領選(6月3日投開票)を巡り、保守系与党「国民の力」の予備選を勝利した金文洙前雇用労働相(73)と韓悳洙前首相(75)の保守系一本化交渉が決裂し、同党執行部は10日、金氏の公認を一時取り消した。執行部は、韓氏への候補交代を目指したが、同日実施した党員投票で否決され、金氏の公認が復活した。
金氏は登録期間最終日の11日に与党公認候補として届け出る見通し。正式な手続きで選出された候補を執行部主導で強引に交代させようとした異例の事態で、党内外から「非民主的」と批判が広がっていた。
与党内では形勢を逆転するため、中道層への支持拡大が期待される韓氏への一本化を求める声が強かった。しかし、一本化で期待された相乗効果が失われただけでなく、与党への失望感が広がるのは必至だ。支持率でリードする革新系最大野党「共に民主党」候補の李在明前代表(60)にさらに有利な情勢となった。
与党執行部の責任論も出ている。与党トップの権寧世非常対策委員長は「競争力のある候補を立てようとした決断だったが、手続きの混乱によりご心配をお掛けした」と記者団に語り、党員と国民に謝罪。「一本化を成し遂げられず、本当に残念だが、全ての責任を取って私が退く」と辞任を示唆した。
国会議員や京畿道知事を歴任したベテランの金氏は予備選を経て、3日の党大会で公認候補に選出された。金氏は10日、「候補の資格を不法に剥奪した政治クーデターだ」と執行部に反発していた。党員投票の結果を歓迎し、「党員と国民に感謝する。選挙を勝利に導く」と強調した。
一方、韓氏は2022年の尹錫悦前政権発足当初から首相を務めた。予備選には参加せずに無所属で出馬を表明したが、10日に入党。公認候補としての活動に向け意欲を示していた。韓氏の陣営は、党員投票の結果を受け「国民と党員の意思を謙虚に受け止め、金氏と党の勝利を心から願う。これまでの応援や叱責に感謝する」との声明を出した。
次期大統領に誰がふさわしいかに関する8日発表の世論調査「全国指標調査」によると、李氏が支持率43%。韓氏の23%に対し、金氏は12%と引き離されている。
【時事通信社】
〔写真説明〕韓国の韓悳洙前首相(左)と与党「国民の力」の大統領予備選で勝利した金文洙前雇用労働相=8日、ソウル(EPA時事)
2025年05月11日 01時04分