障害者専門の芸能事務所が東京・渋谷にある。臼井理絵さん(39)が代表を務める「アクセシビューティー」だ。臼井さんは7年前に車いすの女性と出会ったのを機に障害者の就労支援に取り組んでおり、「すべての人の価値が認められる社会に」と意気込む。
臼井さんは2018年5月、自宅でネイルサロンを営んでいた時に知人の紹介で体が不自由な若い女性に出会った。女性は「車いすで入れるバリアフリーのネイルサロンはなく、障害者がネイルを勉強できる学校もない」と訴えていた。
訴えを受け、臼井さんはボランティアで月2回、都内でネイルスクールを開いた。20年8月には、ネイリスト育成に向けて同社を起業した。
育成に向けたオンラインスクールも模索したが、受講費の問題などで開講には至らなかった。ただ、会社のホームページに載せる写真を撮影するため、同年9月にSNSで障害者のモデルを募集したことが事業再編の転機となった。予想を超える50人ほどが手を挙げ、撮影後も問い合わせが続いた。
そこで臼井さんは、ネイリスト育成の目標はいったん諦め、21年3月に障害者が主役のウェブマガジンを創刊。同誌用に障害者モデルのオーディションを開くと、約150人が参加した。モデルの枠は3人だけだったが、魅力的な人材が多く、落選者の受け皿として同社内に芸能事務所を立ち上げた。
オーディションは22年以降も毎年行い、ポージングや演技を教える芸能スクールも開設した。現在は約40人のモデルやタレントが所属し、CMやテレビドラマで活躍する。
CMなどへの障害者登用は始まったばかりといい、臼井さんは「登用が定着するかどうかが課題だ。彼ら、彼女たちの夢や目標が一つでも多くかなうようにサポートしたい」と話す。
今年1月には、事務所の一角にバリアフリーのネイルサロンも開業した。「育成する場所がなければ障害者の就労機会をつくれない。ネイリスト育成にも取り組みたい」と力を込めた。
【時事通信社】
〔写真説明〕アクセシビューティー代表の臼井理絵さん=4月18日、東京都渋谷区
2025年05月31日 07時17分