「節目」控え苦境に=関税交渉、コメ開放も再燃



日米関税交渉で日本側が苦境に立たされた。相互関税上乗せ分の適用停止期限の9日を交渉の「節目」と位置付けて協議を続けてきたが、トランプ米大統領がここにきて日本への不満を連発。対日関税の大幅引き上げを示唆したほか、自動車貿易の不均衡を批判した。「聖域」としてきたコメの市場開放も再びちらつかせ、石破政権は難しい判断を迫られている。

交渉役の赤沢亮正経済再生担当相は、これまでに7回訪米。相互関税の他、自動車への追加関税などの見直しを求めた。特に、日本経済への打撃が大きい自動車関税は譲れない一線。米側の歩み寄りを引き出すため、日系自動車メーカーが米国で生産した車の輸入や、日系メーカーの国内販売網を使った米国産車の販売など輸入拡大につながる協力を打診してきた。

エネルギーについても、2月に米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大で首脳同士が合意した後、民間レベルで契約を積み上げた。一方、米国産米の輸入拡大は一時、ミニマムアクセス(最低輸入量)枠内で検討されたものの、参院選を前に農家などに配慮して「封印」。赤沢氏は「農業を犠牲にするような交渉はしない」と繰り返してきた。

これに対し、トランプ氏は「日本は深刻なコメ不足が生じているのに米国からコメを買おうとしない」と不満をあらわにした。日本が期待していた相互関税上乗せ分の停止延長も否定。交渉進展の糸口はつかめず、次回閣僚級交渉の日程調整が進まない。

石破茂首相は2日、首相官邸で記者団に対し、トランプ氏の発言に関して「お互い国益実現のために協議を重ねており、一致点を見いだすべく最善の努力を続けていく」と強調。「節目」の9日までに交渉を打ち切られた場合の対応については、「全力を尽くすとしか申し上げられない」と語った。赤沢氏は「両国の国益を懸けた協議で、一筋縄ではいかない」と述べ、難航していることを認めた。

産業界からは交渉の長期化を懸念する声が漏れる。ある企業幹部は「トランプ氏に花を持たせ、実を取る交渉をすべきだ」と指摘。米国産米の輸入拡大については、「備蓄米を放出したから必要だという理由で決断してほしい」と、早期合意に期待する考えを示した。

【時事通信社】 〔写真説明〕記者団の取材に応じる石破茂首相=2日午後、首相官邸 〔写真説明〕トランプ米大統領の発言などを巡り、記者団の取材に応じる赤沢亮正経済再生担当相=2日午後、東京都千代田区

2025年07月03日 08時06分


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