【ロンドン時事】昨年の英総選挙で労働党が歴史的勝利を収め、スターマー首相が就任して5日で1年。14年ぶりの政権交代で変化を求める国民の期待を集めて船出したが、福祉縮小などの歳出削減計画が反発を呼び、支持は低迷している。身内の与党内からも政権の先行きを懸念する声が上がり、早くも苦境を迎えている。
労働党は昨年7月4日の総選挙で、不祥事続きだった保守党を破り、地滑り的勝利を果たした。翌日、首相に就任したスターマー氏は「変革」を約束。経済成長実現を目指して政権運営をスタートさせた。
しかし、国の財政事情は厳しく、政権は出だしから数々の難関に直面する。財政健全化の一環として打ち出した年金生活者への冬季暖房費補助打ち切りが不評を買ったほか、最近も障害者手当の受給基準を厳格化する政府案に与党議員が猛反発。政権は大幅な見直しを余儀なくされる「屈辱的打撃」(スカイニューズ)を被った。
スターマー政権下で初の大規模選挙となった今年5月の地方選で、労働党は英国の欧州連合(EU)離脱運動を率いたファラージ氏が党首を務める新興右派ポピュリスト政党「リフォームUK」に大敗。先月公表された世論調査結果でも、「あす総選挙が行われた場合」の獲得議席予想で、リフォームUKに第1党の座を奪われた。
次期総選挙は2029年までに行われる。それまでリフォームUKが勢いを持続できるかは不明だが、首相が支持回復へ特効薬を見いだせなければ、同党のさらなる台頭を許しかねない。報道によれば、与党内には「数カ月以内の首相退陣」を予測する声もあり、スターマー氏は厳しい政権運営を強いられそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕スターマー英首相=6月24日、オランダ・ロッテルダム(AFP時事)
2025年07月04日 20時31分