企業献金見直し、試される姿勢=与野党、政治改革へ熱気冷め―「深掘り・日本の課題」【25参院選】



20日投開票の参院選は政治改革も論点の一つだ。与野党は自民党派閥裏金事件を受けて政策活動費廃止などの改革を順次進めてきたが、「30年越しの宿題」とされる企業・団体献金見直しに関しては合意のめどが立っていない。事件表面化から1年半以上が経過し、改革に向けた与野党の熱気は冷めつつあるとの見方も出ている。

◇「平成の政治改革」の宿題

企業・団体献金見直しはリクルート事件を受けた1994年の「平成の政治改革」以来の懸案だ。与野党はこの時に政党交付金を導入。当時、自民党総裁だった河野洋平元衆院議長は「企業献金をやめて公費助成にしようということだった」と証言し、「企業献金は廃止しなければ絶対におかしい」と語る。

2023年の裏金事件表面化後、与野党は1年かけて(1)議員本人による政治資金収支報告書の確認書作成を義務化(2)政治資金パーティー券購入者の公開範囲を拡大(3)政活費廃止―などの法改正を実現。企業・団体献金見直しについても25年3月末までに結論を得ることを申し合わせた。

しかし、協議を通常国会会期末の6月下旬まで延ばしても、結論には至らなかった。自民は「平成の政治改革」の際に「企業・団体献金を廃止する方向となった事実はない」(石破茂首相)と河野氏に反論。政治活動の自由は企業・団体にもあるとして、存続前提の「公開強化」法案を出した。

これに対し、立憲民主党、日本維新の会、参政党、社民党、衆院会派「有志の会」は「原則禁止」法案を提出。共産党とれいわ新選組も禁止を主張した。ただ、公明党と国民民主党は「規制強化」案を独自にまとめ、3案がいずれも過半数の賛成を得られない三すくみの状態となった。

国会最終盤、立民は「27年1月1日までに合意を得る」と文書で確認するよう求めたが、自民は応じなかった。

◇厳しい目線

立民や維新は参院選後に議論再開を求める構えだが、意見集約は容易ではなさそうだ。

今月2日に行われた党首討論会。首相が「禁止ではなく公開だ」と主張すると、立民の野田佳彦代表は「あきらめずに禁止を実現したい」と強調。これに対し、維新の吉村洋文代表は、立民が率先垂範して企業・団体献金を党内で禁止すべきだと迫り、「禁止派」内の温度差をうかがわせた。

公示日の3日、与野党10党の党首のうち、第一声で「政治とカネ」に時間を割いたのは野田氏と公明党の斉藤鉄夫代表だけだった。「関心が薄れつつある」(有識者)との見方もあるが、東京都議会会派の裏金問題を抱える自民が6月の都議選で大敗したように、有権者の厳しい目線は変わっていない。積年の宿題をどう返すか、各党の姿勢が試される。

◇民主主義活性化の観点大切

中北浩爾・中央大学教授(政治学)の話

自民党派閥裏金事件は、秘書による政治資金収支報告書の記載漏れを国会議員がチェックできなかったのが主因だった。政治資金収支報告書の確認書の導入などにより、対処はかなりの程度進んだ。

企業・団体献金見直しを巡って対立するのは不毛だ。冷静に妥協した方がいい。地方議員の扱いもある。企業・団体献金を禁止した場合、政党助成法の対象ではない地方議員は資金をどう集めるのか。審議会をつくって選挙制度を含めて議論するなど、第三者が提案することがあってもいい。

今回の選挙は参院では事件後最初の審判となる。各政党がどのような対応をしているのか、有権者は注目すべきだ。どのように民主主義を活性化していくかという観点で判断することも大切だ。

【時事通信社】 〔写真説明〕政治改革関連法案の可決後、共同記者会見に臨む細川護煕首相(右)と河野洋平自民党総裁(いずれも当時)=1994年1月、国会内

2025年07月07日 07時09分


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