直近3回の参院選で定数4を日本維新の会、自民、公明の3党が分け合った大阪選挙区。全国的に退潮傾向にある中、ここを創業の地とする維新は党の命運が懸かる。新興勢力の伸長に直面し、20日の投開票へ強い危機感を募らせるのは公明も同様だ。(敬称略)
◇至上命令
「どの政党も本部は東京。本当に地方のことを考えているのは維新だけだ」。代表の吉村洋文(大阪府知事)は3日、大阪市内有数の繁華街なんば駅前で第一声を上げ、府・市の行財政改革など旗揚げ以来の「実績」を強調し、支持を訴えた。
聴衆にひと頃の盛り上がりはない。ある維新地方議員は「集まる人が少ない」と率直に認めた。
参院選にはともに大阪市議だった佐々木理江、岡崎太の2新人を立てた。「おおさか維新の会」の名で臨んだ2016年以降、2議席を得てきた。
だが、党支持率は下降。昨秋の衆院選は大阪の19小選挙区で全勝したが、府内の比例代表の得票は約56万票減った。今回の候補者選定に漏れた現職参院議員と大阪市議が離党するなど、内輪のごたごたも目立つ。
「皆さんの中で(票を)きれいに分けてほしい」。今月3日夜、佐々木と岡崎は堺市のホールで開かれた集会にそろって参加。200人以上の支持者にこう呼び掛けた。得票が偏れば2議席確保は難しいとの判断がある。
活動を支えるのは府内に約300人いる地方議員や首長ら。2チームに分け、両陣営の実動部隊とした。佐々木と岡崎は、日中は各所に散らばり、夜は小選挙区単位で開く演説会に一緒に出席。地方議員らが集めた支持者に家族や知人内の票の振り分けを求めることを欠かさない。
吉村は「6議席以上」を目標に据えた。各地で伸び悩む現状を踏まえ、幹部は「大阪で二つ取れないと達成できない」と予測。別の関係者は「一つ落とせば代表の進退に発展する」と指摘した。
◇「原点」の議席
公明にとり大阪は特別な地だ。結党前の1956年参院選で支持母体・創価学会が立てた候補が勝ち、国政進出を果たした。後に会長となる故池田大作が陣頭指揮。その後も議席を守ってきた。
ただ、衆院選で府内4選挙区の候補が全敗。学会員の高齢化による集票力低下も顕著だ。ある大阪市議は「今は何が起こるか分からない」と語る。
「公認会計士、税理士の経験を生かし、消費税軽減税率導入に道筋をつけた」。3選を目指す杉久武は3日、大阪市内の大型商業施設前で声をからした。連日街頭に立ち、露出を増やす。「空中戦」も重視する作戦だ。
自民新人の柳本顕を含め「指定席」3党の陣営が「脅威」とみるのが、勢いを示す参政党。大阪を最重点区に決め、代表の神谷宗幣が4、5両日にてこ入れした。神谷は元大阪府吹田市議。維新の吉村が第一声を上げた同じ場所に立ち、「参政党のルーツは大阪だ」と声を張り上げた。
国民民主党も代表の玉木雄一郎らが序盤から連日遊説。SNSを通じた選挙戦を得意とするため、参政新人宮出千慧や国民新人渡辺莉央の浸透度は見えにくい。2回連続で6番手だった立憲民主党も新人橋口玲が政権批判票の受け皿になることを目指す。公明関係者は「圏外にいた勢力との4位争いだ」と語る。
「うちも既存政党と見られている。実績で差別化しないとまずい」。維新幹部は顔を引き締めた。
大阪選挙区には共産新人の清水忠史らも立候補している。
【時事通信社】
〔写真説明〕参院選候補者の演説を聴く有権者ら=4日、大阪市
2025年07月07日 07時03分