犠牲者手掛けた絵本、アニメ化=元同僚「遺志継ぎたい」―京アニ放火殺人



京都アニメーション放火殺人事件で、犠牲者の一人となった木上益治さん=当時(61)=が生前手掛けた絵本が事件後、元同僚らによりアニメ化された。「彼がやりたかった遺志を継いでいきたい」。今後、シリーズ化も目指しているという。

企画したのはアニメーター本多敏行さん(74)。本多さんは「ドラえもん」などで知られるアニメ制作会社「シンエイ動画」(東京)で木上さんと出会った。その後、木上さんらと独立し、「エクラアニマル(旧・あにまる屋)」を設立。親交が深かったが、京アニに移籍した木上さんが事件に巻き込まれたと知り、絵本のことを思い出したという。

木上さんはアニメーターとして忙しい日々を過ごす傍ら、仕事の合間を縫って子供向けの作品を描きためていた。アニメ化したのは、木上さんがかつてエクラアニマルから自費出版した絵本「小さなジャムとゴブリンのオップ」で、魔法使いの見習「ジャム」が怪物「オップ」との関わりを通して成長していく物語。本多さんの呼び掛けに応じた60~70代のベテランアニメーター6人で、約17分間のアニメを完成させた。「もっとすごい作品をいっぱい生み出せたかもしれない」。本多さんは言葉を詰まらせながら、生前の木上さんをしのんだ。

「青葉真司死刑囚(47)がこういうアニメを見て育っていれば、人を思いやる気持ちや愛情に触れられていたかもしれない」。昨年春に行われた上映会でそう訴えたという本多さん。木上さんが残した絵本のアニメシリーズ化を目指しているといい「全編作れば彼が思っていたことが総合的に分かるようになる。多様化した社会にふさわしい作品になる」と意気込む。本田さんは「下手なものは作れないぞという気持ちで挑みたい」と笑顔を見せた。

【時事通信社】 〔写真説明〕京アニ事件で犠牲になった木上益治さんが残した絵本などの作品=6月13日、東京都西東京市 〔写真説明〕京アニ事件で犠牲になった木上益治さんの元同僚でアニメーターの本多敏行さん=6月13日、東京都西東京市

2025年07月18日 14時35分


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