日本、オーストラリア両政府は5日の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で、安全保障協力の深化を確認した。中国、ロシア、北朝鮮3カ国の連携強化の動きをにらみ、結束を演出した形だ。日本は日豪関係も土台に、米国とインドを加えた枠組み「クアッド」の協力をさらに強めたい考えだが、トランプ米政権の高関税政策で米印関係は冷え込んでおり、先行きには不安が漂う。
「50年を見据えた協力関係を再定義する」。岩屋毅外相は協議後の共同記者発表で、今回の2プラス2の意義をこう強調。マールズ国防相は「日豪関係はピークに達している」と応じた。
日豪間の安保協力は近年、急速に深まっている。2017年に物品役務相互提供協定(ACSA)に署名。22年には安保協力に関する共同宣言を発表し、その翌23年に部隊間の相互往来を容易にする円滑化協定(RAA)を締結した。いずれも中国の軍事的台頭を踏まえたものだ。
今回の2プラス2の目玉の一つは、豪政府による海上自衛隊の「もがみ」改良型護衛艦ベースの新型艦導入に向けた協力の確認だ。中谷元防衛相が2プラス2で「防衛協力をさらなる高みに引き上げる」と力説すると、マールズ氏は「非常に期待し、胸を高鳴らせている」と応じた。
日本は日豪協力の先に、日米豪3カ国、さらに日米豪印4カ国の連携強化を視野に入れる。もがみは米軍との共同運用を考慮した設計。採用で日米豪の相互運用性は格段に増す。防衛省幹部は「共同の作戦計画が立てやすくなる」と語る。
とはいえ、4カ国連携は不透明感が拭えない。インドとパキスタンの武力衝突を巡って米印関係は悪化し、米国の高関税政策で緊張はさらに高まった。米豪間の不協和音も皆無とは言えず、米メディアはトランプ氏が今秋予定されるクアッド首脳会議を欠席する見通しだと報じている。
8月下旬の来日に続いて訪中したインドのモディ首相は、中国、ロシア、北朝鮮の3首脳が並んだ今月3日の軍事パレードへの参加は見送ったが、今後、中国と接近する可能性も指摘される。日本政府関係者は「日本が主導的な役割を果たせるかが問われる」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕握手する(左から)オーストラリアのマールズ国防相、ウォン外相、岩屋毅外相、中谷元防衛相=5日、東京都港区(代表撮影)
2025年09月08日 17時50分