7月の参院選で1議席を得て「政党要件」も満たした新興政党「チームみらい」が、デジタル技術を活用した「民主主義のアップデート」を掲げ、注目を集めている。党首の安野貴博氏(34)は人工知能(AI)エンジニアの経歴を持ち、「いろんな声を聞くことが民主主義で重要だ」と話す。政治参加のハードルを下げ、政治資金の透明化を図るなど、テクノロジーを駆使した政治改革を模索している。
安野氏は東大工学部でAI研究の第一人者、松尾豊氏の下で学び、AI関連の起業も経験。昨年の東京都知事選に初出馬し、AIを活用した公約づくりが話題を呼び、政治経験がないにもかかわらず約15万票を獲得した。先の参院選の比例代表で得票率2%を超え、公職選挙法などが定める政党要件をクリアした。
安野氏は党内に「永田町ソフトエンジニアチーム」を設置した。エンジニアやデザイナーなど10人程度の専門家で構成。「政治とカネ」の問題を受け、政治資金の収支をネット上で公開するシステムの開発を進めている。
政策に関する意見をオンラインで収集する「デジタル目安箱」の設置も準備中だ。国会審議の状況を可視化し、集めた意見を安野氏の国会質問に反映させる仕組み。秋に想定される臨時国会までの整備を目指しており、「良いアイデアが実際に通う『回路』を作りたい」と意気込む。
選挙の投票だけでなく、国や自治体への陳情・請願のプロセスもデジタル化する構想を描く。「永田町に足を運んで陳情するのは普通の人は経験がない。(オンラインで)敷居の低いやり方を用意できる」と提唱する。
先例を重視する国会はデジタル化の遅れが指摘される。安野氏は「世襲議員や職業政治家が多い。新陳代謝が弱まっていることが課題だ」と分析し、多様な人材の流入が重要だと訴える。
チームみらいが参院選で公認した候補者は15人。エンジニアや会社役員、教員など多彩な職歴を持ち、平均年齢は35歳と若い。安野氏は次期衆院選に向け「政治の業界に良くも悪くもいなかった人を擁立していきたい」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕インタビューに答えるチームみらいの安野貴博党首=8月13日、東京・永田町
2025年09月07日 07時12分