首相、解散カードでけん制=実現へ壁、自民に反発―総裁選前倒し政局



石破茂首相(自民党総裁)サイドが衆院解散・総選挙のカードをちらつかせ、党内に広がる総裁選前倒し要求の動きをけん制している。地盤の弱い議員に対して圧力になるとみるが、解散権行使には壁が立ちはだかる。反発を招いており、逆効果になる可能性もある。

首相側近の一人は臨時総裁選の実施が8日に決まった場合の対応について「衆院を解散すればいい。リセットだ」と強気の構え。関係者によると、首相自身も「状況次第で解散する」と漏らし、森山裕幹事長は「首相もいろいろ考えている」と周囲に語る。

総裁選に反対する鈴木宗男参院議員は2日の党両院議員総会で、首相に向かって「解散に打って出る心積もりでやってもらいたい」と呼び掛けた。出席議員の目を意識しての発言とみられる。

首相が解散風を吹かせるのは、内閣支持率が上昇に転じたことが背景の一つにある。反石破勢力には裏金事件を起こした旧安倍派の議員も多い。国民のために「政治空白」はつくらないとする自身と、「石破降ろし」を仕掛けた議員のどちらに正当性があるか有権者に判断してもらう、という論法だ。

だが、昨秋の衆院選と今夏の参院選に続けて惨敗した事実は重く、思惑通りに進む保証はない。

小泉進次郎農林水産相は「党内の一致結束が一番重要だ」と解散に否定的。重鎮は「このタイミングの解散は信じられない」と憤る。中堅は「前倒し要求が圧倒的な数になれば強行できない」と指摘した。

制度面でも壁がある。解散の閣議決定には全閣僚の署名が必要だ。2005年の小泉純一郎首相による「郵政解散」の時は島村宜伸農水相が署名に応じなかった。同氏は罷免され、小泉氏が兼務して決定した。

首相の判断に複数の閣僚が異を唱えれば、解散に踏み切れない事態も想定される。連立を組む公明党は反対の意向。首相と同様に党内基盤の弱かった三木武夫、海部俊樹両首相が解散を模索したものの同意を得られず、断念した前例がある。

総選挙となれば、石破降ろしに加担した議員への「刺客」擁立が選択肢に上る。ただ、短期間で準備を進めるのは難しいとの見方が支配的だ。

とはいえ、首相はトランプ米大統領に訪日招請の親書を送ったり、経済対策の策定を表明したりするなど政権維持に執念を示す。退陣論を主張する議員は「何をするか読めない」と警戒。党内に緊張感が高まりつつある。

【時事通信社】 〔写真説明〕報道各社の質問に答える石破茂首相=5日、首相官邸

2025年09月07日 07時09分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース