「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は、国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化を「2025年度から26年度」に達成するとした従来の財政健全化目標を事実上撤回した。内閣府は26年度に3.6兆円程度の黒字になると試算していたが、大規模な経済対策で25年度補正予算案の歳出が大きく膨らみ、目標が未達となる見通しが強まっている。
高市早苗首相は7日の衆院予算委員会で「単年度のPBという考え方は取り下げる」と表明。26年度までの黒字化にこだわらない考えを示した。
PBは、社会保障や公共事業といった政策経費を借金に頼らず税収などでどの程度賄えているかを示す指標。小泉政権が01年にPB黒字化目標を設定して以来、歴代政権が目標に掲げてきたが、1992年度以降、赤字が続いている。
現在、高市政権は物価高への対応や成長投資、防衛力強化を柱とする経済対策を策定中で、歳出規模は「何かキャップをはめるものではない。必要なものをしっかり積み上げる」(自民党の小林鷹之政調会長)として大規模補正が予想される。
補正予算の多くは翌年度に執行されるため、翌年度のPB悪化要因となる。13.9兆円に上った24年度補正と同規模に膨らめば、26年度は5兆円規模のPB悪化要因とされ、内閣府試算の黒字幅が帳消しになる計算だ。
首相は「成長率の範囲内に債務残高の伸び率を抑え対GDP(国内総生産)比を引き下げる」と強調。財政出動で分母となるGDPが膨らめば、債務残高が積み上がっても対GDP比は低下するともくろむ。政権は日本成長戦略本部を設置し、人工知能(AI)・半導体や造船など17分野で大胆な投資を進める方針だ。
ただ、アベノミクスを掲げた安倍政権以降、歴代政権が大規模な財政出動を繰り返しても、日本経済の成長力を底上げすることはできなかった。市場では「ばらまきで債務は増えたがGDPは大して増えなかったでは許されない」(大手証券)との声が出ている。
【時事通信社】
2025年11月08日 07時06分
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