
高市政権初の国会論戦となった衆参両院本会議での3日間の各党代表質問が終わった。高市早苗首相は憲法改正など「高市カラー」の政策課題を巡り「攻め」の答弁を連発する一方、「政治とカネ」の問題では「守り」に回り、テーマによって「攻守」が鮮明だった。立憲民主党などは7日からの予算委員会の質疑で追及を強める方針だ。
「自民党総裁としてあえて申し上げると、緊急事態条項は党として以前から取り組んでいるテーマの一つ。国民の命と暮らしを守り抜くために重要な項目だ」。首相は6日の参院本会議で、改憲に関して参政党の神谷宗幣代表が「緊急事態条項には反対だ」と訴えると、こう反論した。
「憲法尊重擁護義務」を負う立場から答弁を避けるのが「定石」とされる改憲を巡り、時の首相が踏み込んで発言するのは異例だ。4日の衆院本会議では「内閣が改憲原案を国会に提出することは可能」との見解も示した。改憲への期待が強い保守層を首相が意識しているのは明らかだ。
強気の発言は保守色の強い課題についてだけではない。国民民主党の玉木雄一郎代表が5日の衆院本会議で教育国債の創設を提案すると、積極財政路線を掲げる首相は「新しい財源調達の在り方を前向きに検討している」と否定しなかった。与野党には「国債新設か」などと臆測が広がる。
対照的に守勢が目立ったのが自民派閥裏金事件に関するやりとりだった。首相は「ルールを順守する自民党を確立する」と反復。「反省が見えない」(公明党幹部)との批判が漏れる中、6日には「同様の問題が起きた場合にはこれまで以上に厳しく対処する」と語ったが、それ以上の具体論には踏み込まなかった。
裏金事件の関係議員の一人である佐藤啓官房副長官の起用を巡っては「私の性格や考えを承知し、耳の痛い事柄も直言してくれる存在だ」として理解を求める「平身低頭」の答弁を繰り返した。立民、国民民主、公明3党が実現を迫る企業・団体献金の受け皿規制を巡っては「慎重に議論する必要がある」との防衛ラインを崩さなかった。
論戦の舞台は7日から、一問一答で丁々発止の質疑が繰り広げられる予算委に移る。立民の野田佳彦代表は6日の党会合で「首相は『令和の検討使』かよというぐらいに曖昧な答弁だった。歯切れの悪い答弁にはどんどん食らい付き、しっかりただしていく」と対決モードを鮮明にした。
【時事通信社】
〔写真説明〕参院本会議で答弁する高市早苗首相=6日午後、国会内
〔写真説明〕参院本会議で、参政党の神谷宗幣代表(手前)の質問を聞く高市早苗首相=6日午後、国会内
〔写真説明〕各党代表質問が行われる参院本会議に臨む佐藤啓官房副長官=6日午前、国会内
2025年11月06日 20時47分