
自民党結党70年に当たり、幹事長や副総裁を務めた大島理森元衆院議長(79)が時事通信のインタビューに応じた。多党化時代のあるべき党の姿について「自民の本質は国民政党だ。極端な右も左も取らないことだ」と主張。少数与党の政権運営に関し、野党との「信頼」の重要性を説いた上で「政治は妥協だから、妥協点を探す努力をしなければならない」と語った。
―党の現状をどう見るか。
海部内閣の官房副長官だった当時、米ソ冷戦が終わった。かつては「社会主義や共産主義の国にしてはいけない」と訴えると共感された。冷戦終結を機にイデオロギー的な対立軸がなくなり、国民の選択に幅ができた。単独政権から連立政権の時代に入り、野党を経験した。
訴えの軸もなくなったと感じる。目指す国の姿を首相が訴えても、盛り上がりが少ない。与党が過半数を割った昨年の衆院選では、政権交代の受け皿がなかった。参院選で、選択の幅が多党化、多極化という現象になって表れた。
―多党化をどう捉えるか。
比較第一党としての自民は続く可能性がある。私自身、(国対委員長などを務め)国会運営をする場面が非常に多かった。野党との協議は、できることとできないことを明確に伝え、約束を守ることだ。その中で信頼は生まれてくる。政治に緊張感が必要だ。政権を担おうとする野党のグループがあるべきではないか。
連立とは、政策以上に国の責任を共有することだ。ここを基本にまずは日本維新の会との連立を定着し、安定させる努力が大事だ。議員定数削減は立法府全体の問題で、議長経験者の立場から言えば各党会派の理解をできるだけ得る努力をすべきで、簡単にやってはいけない。
―現役時代には公明党との関係構築に尽力した。連立解消はどう映ったか。
率直に残念だ。民主党政権下、共に野党として歩み、ねじれ国会で闘争し、安倍内閣の安全保障法制も、公明からすると非常に重い問題だった。外から見た感想だが、もう少し何か手はなかったのかと思う。
―支持層が参政党や国民民主党に流れたとされる。守るべき「保守」のあり方は。
急激な改革はしないのが保守の理念だ。ワンフレーズ的に刺さる言葉での浸透を自民がまねてはいけない。多党化の時代ほど、包括的な保守の理念を共有しながら、国民の中に入っていくことが大事だ。
―党再生に必要なことは何か。
候補者が選挙区で活動を活発にすることしかない。とにかく有権者と会い、小さな会合を開き、高市早苗首相の考え、党の政策を徹底的に説明し、意見を頂く。国民はSNSやテレビでいろんな情報を持つが、身近にいる議員が発する言葉の現実味から、信頼関係が生まれる。若手は人間関係をつくる努力が薄くなり、SNS利用が増えた。対面での説明が政治活動の基本だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕インタビューに答える大島理森元衆院議長(自民党元副総裁)=12日、東京都港区
〔写真説明〕インタビューに答える大島理森元衆院議長(自民党元副総裁)=12日、東京都港区
2025年11月16日 07時14分