
日韓両国は18日、国交正常化から60年を迎えた。歴史問題で関係が冷え込んだ時期もあったが、厳しさを増す東アジアの安全保障環境を背景に、最近は友好ムードが続く。ただ、歴史問題が再燃する懸念はくすぶったまま。双方が目指す未来志向の安定的な関係を維持・継続できるかが今後の焦点となる。
高市早苗首相は18日、正常化60年を巡り自身のX(旧ツイッター)に「国民間の交流が現在の良好な日韓関係を支えている」と投稿。木原稔官房長官は記者会見で「互いに国際社会のさまざまな課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国だ。日韓関係の重要性は増している」と述べた。
日韓関係は元徴用工、慰安婦問題などにより「戦後最悪」と言われるまで悪化した。しかし、保守系の尹錫悦前大統領との間で改善が進展。首脳が相互訪問する「シャトル外交」が定着しつつある。
歩み寄りの背景には、北朝鮮とロシアの軍事協力深化や、中国の覇権主義的動向など、安保環境の変化がある。日韓は、米国を交えた3カ国連携の必要性を共有。日本政府関係者は「韓国は戦略的に重要だ」と指摘した。
首相も「シャトル外交」の活性化など関係改善の流れを重視。来月中旬には地元・奈良に李在明大統領を招き、首脳会談を行う方向で調整している。
折しも、台湾有事を巡る首相の国会答弁に、中国が強く反発。歴史問題も絡めて対日批判を繰り返している。李氏は日中いずれにも肩入れしない意向を示すが、日本としては韓国の引き寄せを図りたい考え。外務省幹部は「首脳間で意思疎通を図れるのは心強い」と語る。
もっとも、歴史問題は日韓間でも火種として残る。特に、首相が意欲的とされる靖国神社への参拝を、韓国側は警戒。実際に踏み切れば反発は必至だ。一方、首相の支持基盤である保守層には参拝を期待する向きが多い。
困難なかじ取りが求められる中、首相は17日の会見で「立場の異なる諸懸案はあるが、両首脳で管理する」と強調した。
【時事通信社】
〔写真説明〕高市早苗首相(写真右)と韓国の李在明大統領(EPA時事)
2025年12月18日 20時31分