
安倍晋三元首相銃撃事件で殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)に対し、裁判員裁判の判決が21日に奈良地裁で言い渡される。被告は殺人罪を認めており、刑の重さが最大の争点。検察側が無期懲役を求刑する一方、弁護側は最長でも懲役20年にとどまると主張している。
街頭演説中の首相経験者が殺害され、社会に大きな衝撃を与えた事件は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が被告に与えた影響について検察、弁護側の主張が対立している。教団への恨みを募らせた被告の銃口が安倍氏に向けられた経緯を、裁判員らがどう判断するかが注目される。
昨年10月に始まった公判では、被告の母親による教団への入信や1億円に上る多額献金を巡り、いさかいが絶えなくなった過酷な家庭環境が被告や家族の口から語られた。被告は「(教団に)一矢報いるのが自分の人生の意味だと思った」と振り返った。
検察側は、被告の不遇な生い立ちは否定できないものの、「犯行の意思決定に与えた影響は極めて限定的だ」とし、刑罰を大幅に軽くする事情には当たらないと主張。これに対し弁護側は、被告は「宗教的虐待の被害者」だと訴え、「生い立ちは最も重要視されるべき犯行動機に深く関わる」と反論した。
検察側は、教団幹部への襲撃が困難となる中、手製銃の材料費などで借金がかさみ、経済的に行き詰まりつつあったと指摘。その上で、なぜ安倍氏を狙ったかについて「被告から納得できる説明はなく、論理的に飛躍がある」と強調し、「教団にダメージを与えるための道具だった」とも述べた。
一方、弁護側は、安倍氏が教団側に「敬意を表する」と述べたビデオメッセージを見た被告が「教団の活動は政治権力によって承認され、自分たちはもう救われない」と絶望感を抱いたと主張。岡山市での襲撃を断念した帰り道、翌日に安倍氏が奈良に来ると知って「偶然を超えたもの」を感じ、銃撃を必ず遂行するという行動に出てしまったと説明した。
銃刀法違反などの罪が成立するかも争点になっている。弁護側は、被告が作製した手製銃が銃刀法上の「拳銃等」には該当しないとして、同法違反の発射罪などについて無罪を主張している。
【時事通信社】
〔写真説明〕山上徹也被告
2026年01月19日 07時05分