今年の干支(えと)の午(うま、馬)。家畜として乳や肉の飲食、農耕の使役、荷物運びに利用されるのは牛と共通しているが、人が背中に乗って速く長距離を移動できることで、人類史上、経済の発展や戦争の拡大に大きな役割を果たした。そのきっかけは4700~4200年前に広がった遺伝子変異であることが、最近の研究で明らかになった。
フランス・トゥールーズ人類生物学ゲノムセンターなどの国際研究チームが昨年8月に米科学誌サイエンスに発表した論文によると、この遺伝子は背骨の形成を担う「GSDMC」。背骨がとがった形から平たく、乗りやすくなる変異が起きた馬が出現し、子孫の選抜や交配を通じて、この変異のある馬が急速に増えたとみられる。
古代と現代の馬のDNAを大規模に比較解析したところ、家畜の馬の遺伝系統の主流は、カスピ海の北方、ボルガ川やドン川の流域に生息していた集団と判明。この集団からGSDMC遺伝子の変異が広がった。
マウスで同遺伝子の働きを抑える実験を行った結果では、背骨の曲がり方が真っすぐに近くなる変化が起きたほか、脚力や運動能力が向上した。
一方、約5000年前には「ZFPM1」と呼ばれる遺伝子の変異により、人に従順な馬が増えた。体格の大きな馬が選抜されて次第に大型化したこともあり、荷車や戦車を引かせるとともに、人が乗って荷物を遠くに運んだり、騎兵に使われたりするようになった。中世のモンゴル帝国がユーラシア大陸の大半を制覇するのに、馬は経済、軍事両面で大きく貢献した。
GSDMC遺伝子の変異は、人では腰椎の骨と骨の間の椎間板が劣化し、痛みやしびれを引き起こす「腰椎椎間板変性症」の要因だと、中国の広西医科大第一付属病院が2020年に発表している。長年積み重ねられた馬の品種改良を遺伝子のデータで裏付ける研究は、人の医療にも役立つと期待される。
【時事通信社】
2026年01月18日 07時03分
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