
多党化が進む中で迎えた衆院選で、自民党と新党「中道改革連合」が事実上の一騎打ちで争うのは全体の1割弱の28選挙区。その一つである山口2区は元首相・安倍晋三のおいの自民の岸信千世と、7期目を目指す中道改革連合の平岡秀夫が激突する。前回1724票差で辛勝した岸は「公明票」を期待できず、危機感を募らせる。平岡は公明の支援を受けて雪辱を期す。自民の実力政治家を輩出してきた「保守王国」が揺れている。(敬称略)
◇「政治とカネにけじめ」
「高市政権は支持率が高い。これに対抗するためには中道政治を標ぼうする人たちが大きな固まりになって戦わなければいけない」。衆院選が公示された1月27日、平岡は岩国市の選挙事務所で開いた出陣式で「対高市」勢力の団結を呼び掛けた。
会場には公明の前衆院議員で、立憲民主党との新党結成に参加した平林晃も出席。立民出身の平岡は「政治とカネの問題について、しっかりとけじめをつける意味でも今回の総選挙は大事な選挙だ」と強調。公明が掲げてきた「クリーンな政治」を意識したアピールを忘れなかった。
前日の26日、平岡は山口市の公明山口県本部を訪問。県本部の幹部は支援する意向を伝えた。平岡の選挙事務所には、公明代表の竹谷とし子、幹事長の西田実仁の名前入りで「祈必勝」と書かれた為書(ためがき)が飾られた。
公明は選挙戦で支持母体・創価学会の集票力を生かした組織戦を展開してきた。こうした公明票は選挙区内に1万~2万票あるとされ、地元の公明関係者は「かなりの公明支持者が平岡に乗ると思う」と予測。2023年の補欠選挙、24年衆院選で岸に連敗した平岡も「支援をいただけたら力強い」と公明票に期待を込める。
◇原発も争点
瀬戸内海に面する上関町では、原発から出る使用済み核燃料を一時的に保管する中間貯蔵施設の建設計画が進んでおり、選挙戦ではエネルギー政策も争点だ。平岡は立民時代に「原発ゼロ」を主張してきたが、中道は基本政策で原発再稼働を容認した。
平岡は「原発に依存しない社会をつくっていくという大きな方向性は同じだ」と強調しつつ、「貯蔵施設反対」は従来通り主張すると説明。公明関係者は「これまで支援してくれた人をつなぎ留め、自分の主張は変わらないことを確認するためにあえて言ったんだろう」と解説する。
◇高市人気に期待
「冬の選挙戦、皆さまの力をもって国政に押し上げていただきたい」。3期目を目指す自民の岸は23年補選で元防衛相の父・信夫から地盤を継ぎ、31歳で初当選。24年の前回は公明の推薦を受け、大接戦を制した。公明関係者は「前回はがむしゃらに岸さんを応援した」と話しており、今回は公明票の行方次第で勝敗が逆転する可能性が出ている。
激戦が予想される中、岸が頼るのが高支持率を誇る首相の高市早苗だ。首相が繰り返す「日本列島を、強く豊かに」を意識してか、演説で「山口から日本列島を、強く豊かに」と力説。安倍の後継を自負する首相との近さを印象付ける作戦とみられ、陣営幹部は「首相は応援に絶対来てほしい」と切望する。
安倍の妻・昭恵は28日の演説会で「主人がかわいがっていた信千世君のために私も応援したい」と激励した。首相に近い財務相の片山さつきも2月2日に駆け付ける予定だ。
任期満了に伴う県知事選が衆院選と同日選となり、どう影響するかも焦点だ。自民などが推す現職に、前知事のめいで自民会派の県議だった新人が挑む構図。岸陣営の関係者は「保守分裂の知事選の要素は大きい。現職陣営がまとまらなければ、こっちの選挙もかなり危ない」と漏らした。
◇衆院山口2区立候補者
平岡
秀夫(72)元法相
中道
前職(6)
岸
信千世(34)元内閣府政務官
自民
前職(2)
(注)敬称略、届け出順。年齢は投開票日現在。丸囲み数字は当選回数。
【時事通信社】
〔写真説明〕衆院選山口2区に出馬した候補者の出陣式で、気勢を上げる有権者ら=1月27日、山口県岩国市
2026年02月01日 07時21分