
イランによる事実上のホルムズ海峡封鎖が続く中、トランプ米大統領が日本などを名指しし、艦船を現地に派遣してほしいとSNSで表明した。高市早苗首相は18日から就任後初めての訪米を予定しており、トランプ氏から自衛隊派遣を直接求められる可能性が高まった。憲法や現行法の制約の範囲内でどのような対応が可能かなどを巡り、日本政府は検討作業を本格化させた。
「護衛艦の派遣はまだ一切決めていない」。首相は16日の参院予算委員会でこう強調。小泉進次郎防衛相も「現時点で自衛隊の派遣は考えていない」と答弁した。
首相はトランプ氏の発信から一夜明けた15日、秘書官を首相公邸に呼び中東情勢について約2時間聴取。日本政府関係者は「米国が具体的に何を求めているのか把握する必要がある。他国の動きも見なければいけない」と情報収集を急ぐ考えを示した。別の一人は「トランプ氏にどう答えるか、早急に検討しなければならない」と語った。
検討されているのは2015年に成立した安全保障関連法に基づく対応だ。日本政府はトランプ氏の支援要請に備え、今回の発信前から「頭の体操」を進めてきた。まず取り沙汰されたのが「存立危機事態」。安保関連法を巡る国会審議の中で、当時の安倍晋三首相がホルムズ海峡での機雷掃海を具体例として挙げた経緯があるためだ。
とはいえ、存立危機事態は(1)日本と密接な関係にある他国への武力攻撃(2)日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由・権利が根底から覆される明白な危険―の存在が要件だ。長年憲法違反とされてきた集団的自衛権の行使につながるケースだけに認定のハードルは高く、政府内では現時点で「99%ないだろう」(関係者)との声が強い。
米軍などへの後方支援活動が可能となる「重要影響事態」も候補に挙がる。ただ、これも「放置すれば日本への直接の武力攻撃に至る恐れがある事態」などを指すとされ、「ハードルは低くない」(関係者)のが実情だ。外国軍への協力支援活動に道を開く「国際平和共同対処事態」は国連決議を必要とする点がネックとなる。
存立危機事態以外の2事態では戦闘現場での活動は禁じられており、「現時点で派遣されても何もできない」(自衛隊関係者)との懸念もある。安保関連法以外では防衛省設置法の「調査・研究」や特別措置法に基づく派遣もささやかれるが、いずれの法的根拠を巡っても「戦闘収束前の派遣は政治的に困難」(関係者)との声が大勢だ。
自衛艦を派遣する場合、日本政府は別の難問にも直面する。米国のイラン攻撃は国際法違反との指摘が相次ぐ中、政府は攻撃に関する法的評価を避けているが、15年の国会審議で当時の安倍首相は、違法な先制攻撃を行った国を「わが国が支援することはない」と答弁している。
首相は9日の衆院予算委員会で、この答弁について「政府の現在の考えと変わりはない」と明言した。これを受け、中道改革連合の後藤祐一氏は「ならば米国のイラン攻撃が合法だと判断しない限り、自衛隊が米軍の後方支援をすることはできないことになる」とクギを刺した。
【時事通信社】
〔写真説明〕参院予算委員会を終え、首相官邸に入る高市早苗首相=16日、東京・永田町
2026年03月16日 15時51分