
高市政権が武器輸出を原則可能とする「安全保障政策の大転換」に踏み切った。軍事的威圧を辞さない中国の台頭など「戦後最も厳しく複雑な安保環境」(高市早苗首相)が背景にある。ただ、憲法の「平和主義」の理念に反するとの批判は根強く、新たなルールの厳格な運用が求められる。
「同盟国・同志国の抑止力・対処力を強化し、企業がより高い生産能力を維持することにつながる」。小泉進次郎防衛相は21日の記者会見で、防衛装備移転三原則と運用指針の改定の意義をこう力説した。
武器輸出を巡っては、1967年に佐藤内閣(当時)が共産圏対象は認めないなどとする三原則を表明。76年に三木内閣(同)が事実上の全面禁輸を打ち出した。以後、例外拡大を目指した安倍内閣(同)を含め、「原則禁止」は変えなかった。今回はそれを「原則可」とする根本的な転換だ。
政府・与党が大義に掲げるのは安保環境の激変だ。日本周辺では中国、北朝鮮、ロシアが威圧的行動を強める一方、トランプ米政権は同盟軽視の姿勢を見せており、日本としては「同志国との連携が重みを増している」(防衛省幹部)。武器輸出は「信頼関係構築の重要なツール」(同)だ。
ウクライナなどで続く武力紛争は長期戦に対する備えの重要性も浮き彫りにした。小泉氏は会見で「継戦能力の確保が喫緊の課題となる中、国内の防衛生産・技術基盤を強化する手段として装備移転は大変有効だ」と強調した。
もっとも、新ルールは「平和国家」の歩みを変質させかねないとの懸念は強い。米国では連邦議会が輸出禁止の共同決議を採択した場合、武器の輸出は認められない。野党からは国会の関与として「事前承認」を求める声も上がったが、政府は主要国で例がないと「事後通知」にとどめた。
政府が代わりに歯止めとして強調するのが「厳格な審査」と「適正な管理」だ。新ルールは殺傷力のある武器の輸出先を防衛装備品・技術移転協定の締結国(現在17カ国)に限定。輸出後に目的外に使われないようモニタリング強化も打ち出した。ただ、「紛争の助長を確実に回避できるのか」(自民党中堅)との懸念は消えていない。
政府関係者は「日本の装備品は高品質で、既に引き合いがある」と説明する。関係者によると、フィリピンは中古護衛艦、インドネシアは中古潜水艦、ニュージーランドは護衛艦に関心を示しているとされ、高市政権は成長戦略の一環として武器輸出の司令塔機能を強化する構えを見せる。
ただ、新ルールが決まった21日、大分県で訓練中の陸上自衛隊の最新鋭戦車内で砲弾が破裂し、隊員が死亡する事故があった。防衛省関係者は「最悪のタイミングだ」と戸惑いを隠さなかった。
【時事通信社】
〔写真説明〕閣議後に記者会見する小泉進次郎防衛相=21日午前、国会内
2026年04月22日 07時56分