
衆院憲法審査会で憲法改正案のたたき台となる「イメージ案」に基づく議論が始まったことに、野党の改憲慎重・反対派が批判を強めている。同案は与党の考え方がベースとみられるが、形式的には与野党合意を受けて衆院の法制局と憲法審事務局が作成しており、慎重・反対派は「中立的な印象が議論を加速させかねない」と警戒する。
衆院法制局がイメージ案を衆院憲法審で報告したのは14日。近年、与野党が集中的に議論を進めてきた緊急事態条項の素案とも言えるもので、大災害などに際しての議員任期延長に加え、内閣による緊急政令制定を可能にする規定案も盛り込まれた。
イメージ案は規定案の横に慎重・反対派の意見も載せている。ただ、緊急政令は議員任期延長ほど議論が進んでおらず、自民党、日本維新の会、国民民主党などが昨年まとめた骨子案にも入っていない。登場するのは2018年の自民改憲案と、昨年の自民と維新の連立政権合意書だ。
衆院憲法審では14日に続き、21日もイメージ案に基づく議論が行われた。自民の新藤義孝元総務相は、イメージ案の一部は事実上の与野党合意として「ピン留め」できると主張。中道改革連合の西村智奈美副代表は「法制局に作成させる段階になかった」とブレーキをかけるのに躍起になった。
14日にイメージ案を報告したのは衆院法制局の橘幸信特別参与だった。橘氏は昨年末まで法制局長を約8年務め、安全保障関連法策定などに関与してきた。同氏は22日、自民の「憲法改正実現議員連盟」で講演しており、中道関係者からは「事務方ののりをこえている」との声も漏れる。
イメージ案への懸念は改憲慎重・反対派に広がる。共産党の山添拓政策委員長は22日の記者会見で「一部の会派の主張に基づき、議論を方向付けようとするやり方だ」と批判。社民党のラサール石井幹事長は「(改憲論議は)想定より早い。気を引き締めねばならない」と語った。
参院野党第1党の立憲民主党はイメージ案の作成過程を問題視しており、党会合で説明するよう衆院法制局に要求。しかし、自民などと法制局が協議した結果、実現しなかった。参院側では与野党を問わず、緊急事態条項の創設に否定的な声が強く、来週以降も余波は続きそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕衆院憲法審査会の冒頭、大規模災害やテロなどに備える緊急事態条項を創設する憲法改正を巡り衆院法制局などがまとめた「イメージ案」について説明する同局の橘幸信特別参与=14日午前、国会内
2026年05月23日 07時04分