
日本の支援団体が北朝鮮にいる拉致被害者に向け、短波ラジオの番組「しおかぜ」でメッセージを送り続けて20年以上が経過した。ただ、短波による情報発信の優先順位が下がる中、NHKが運用する送信機は減少傾向にある。支援者らは設備の拡充を訴える。
「るみ姉、元気ですか。拉致被害者の皆さん、いかがお過ごしでしょうか」。被害者、増元るみ子さん=拉致当時(24)=の弟、照明さん(70)は今月、番組でこう語り掛けた。
番組の開始は2005年。被害者が周囲に気付かれずに聞けるように毎日、深夜から未明に録音放送を続けている。
韓国の放送局「自由北韓放送」が今年5月に公表した調査では、20年以降の脱北者75人のうち、外国の放送を週1回以上聞いていた人は66%。北朝鮮に短波放送が届いていることが裏付けられた。
同放送の李始瀛代表は「山がちな北朝鮮に届けるには短波が最適だ」と訴える。自身も脱北者で、外国の情報に触れて脱北を決意したといい、「情報は人を変え、社会を変える。放送で祖国に勇気を与えたい」と寄付を募って放送を続ける。
日本の海外向け短波放送設備は現在、茨城県古河市の八俣送信所に一本化されている。運用するNHKによると、短波放送は戦前に始まり、長らく国際放送の中核的な手段だった。だが、衛星放送やインターネット配信の拡充などを背景に、1992年のピーク時に11機あった送信機は現在5機まで減少。「今ある設備を適切に維持、運用していく」としており、老朽化などでさらなる縮小を懸念する声もある。
しおかぜを放送する民間団体「特定失踪者問題調査会」は、北朝鮮が出す妨害電波対策で、異なる2波の周波数で同時に番組を放送してきた。NHKに払う同送信所の使用料は最大月約400万円。費用は寄付や政府からの委託料で賄ってきた。
ただ、イラン情勢を受けて今年3月に中東向け放送が拡大されると送信機が足りなくなり、しおかぜは2波での同時放送ができなくなった。調査会の村尾建兒幹事長は「中東も有事だが、北朝鮮はずっと有事だ」と危機感をあらわにするとともに、「国が関与して設備を整備・拡充すべきだ」と強く訴えている。
【時事通信社】
〔写真説明〕短波ラジオ番組「しおかぜ」を収録する、特定失踪者問題調査会の村尾建兒幹事長(右)=6月15日、東京都文京区
2026年07月27日 14時31分