ミャンマー避難民に物資届かず=食料不足深刻、環境劣悪



【メーホンソン(タイ北西部)時事】ミャンマーでクーデターを起こし、権力を握った国軍が少数民族カレンの武装組織への攻撃を強め、隣国タイとの国境沿いで大量の避難民が出ている。一部は川を渡り、タイ側に逃れた。タイでは多くの支援物資が寄せられながら、関係当局の動きが鈍く、避難民に届いていない。支援団体は「避難民の備蓄食料はほとんどない。支援が緊急に必要」と危機感を募らせている。

川を挟んでミャンマーと向かい合うタイ北西部メーホンソン県。バンコクから支援物資を届けに来たキリスト教団体のメンバーが9日、所在なげにミャンマー国軍の監視所が並ぶ対岸を見詰めていた。修道女の一人は「日用品が足りないと聞いて持って来たが、避難民に直接届けられず、地元の教会に預けた」と話す。

一帯を管轄するタイ軍は、支援物資は赤十字を通じて届けるよう指示している。しかし、地元当局者は「赤十字が搬送を許可しない。生ものは腐り始めている」と明かす。支援団体によると、ミャンマー国軍の空爆が始まり、避難民が大量に発生した3月末以降、物資の搬送が公式に認められたのは1回きりという。

教会では行き場を失った支援物資が山積みされていた。物資は乾麺や米、水、衣服、おむつなどさまざま。物資の対応に当たるカレンの男性は、正規の手続きで搬送できないため、「非公式ルート」で少しずつ運んでいると明かした。山間部を徒歩で行かなければならない非公式ルートは危険で時間もかかるが、「赤十字の決定を待っていては間に合わない」と語った。

避難民を支援するNPO「フレンズ・ウィズアウト・ボーダーズ財団」のポーンスクさんは「避難民キャンプの衛生状態は最悪で、多くの人が体調を崩している」と緊急支援の必要性を強調。物資を渡せなかった修道女は「政治を切り離し、カレンの人権を尊重すべきだ」と力説した。

【時事通信社】 〔写真説明〕国境の川の対岸に並ぶミャンマー国軍の監視所=9日、タイ北西部メーホンソン県から撮影 〔写真説明〕教会に山積みされた支援物資=9日、タイ北西部メーホンソン県

2021年04月12日 14時46分


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