公明党が「東京都内での全選挙協力を解消する」と自民党に通告したことを巡り、自公幹事長が30日に再び会談する。自民は協力継続に向けて打開の糸口を探るが、妥協につながる妙案は浮かんでいない。自民内では協力解消の動きが東京以外にも広がりかねないとの懸念も出ている。
自民の茂木敏充幹事長は28日、広島市で講演し「安定政権をこれからもしっかりと維持していきたい」と強調したが、自公関係には言及しなかった。一方、公明の石井啓一幹事長は埼玉県草加市で街頭演説。協力解消に触れて「東京に限定しての話だ。連立政権に影響がないよう取り組んでいきたい」と語った。
両党がこじれた発端は衆院小選挙区の「10増10減」に伴い公明が求めた東京28区(練馬区東部)での独自候補擁立を自民が拒否したことだ。自民は代替案として東京12区(板橋区の一部と北区)か東京15区(江東区)を譲ると打診。だが、石井氏は25日、茂木氏との会談で、自民案を不服として次期衆院選を含む東京での協力解消を通告した。
12、15両区には出馬を目指す自民現職がいる上、公明が1月に擁立を決めた東京29区(足立区の一部と荒川区)では自民都連が協力を拒んだ。公明は「誠実な協議とは言えない」(西田実仁選対委員長)と不満を募らせている。
30日の再会談は自民が申し入れた。ただ、自民幹部は「新提案があるわけではない」と認める。前回の衆院選まで公明が地盤としていた東京12区なら議席獲得の可能性は高いとして、先の提案を受け入れるよう説得するしかないのが現状だ。
公明は東京での協力解消はもはや覆らないとの立場。石井氏は25日、茂木氏に「最終的な方針だ」と明言した。12区を公明に譲る案にも「不誠実で、とても受け入れることはできない」(西田氏)と冷ややかだ。
公明は埼玉14区(草加市など)に石井氏、愛知16区(犬山市など)に伊藤渉政調会長代理をそれぞれ公認すると決定済み。自民の埼玉、愛知両県連内では公明への不満がくすぶる。自民執行部は協力解消の動きが両県に波及しかねないと懸念を強め、両県連には公明支援を早急に打ち出すよう求めた。自民関係者は「30日の協議は延焼を防ぐのが精いっぱいかもしれない」と悲観的な見通しを示した。
こうした中、東京都議補欠選挙(大田区選挙区)が6月4日投開票に向けて始まった。欠員2議席を自民、日本維新の会、地域政党の都民ファーストの会、無所属など計6候補が争う。自公の亀裂が選挙戦に影響するか注目が集まりそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕自民党議員の会合で講演する茂木敏充幹事長=28日午後、広島市
〔写真説明〕街頭演説する公明党の石井啓一幹事長=28日午前、埼玉県草加市
2023年05月28日 17時01分