迷い消えた斉藤=濃密な1年経て―柔道パリ五輪代表



パリ五輪を翌年に控えた2023年は濃密な時間を過ごした。柔道男子100キロ超級代表の斉藤立(21)=国士舘大=が、苦しんだ日々と、そこから学んだ心の成長を語った。

慢性的な故障を抱えていた昨年は国際大会出場が2大会だけだったが、今年は12月のグランドスラム東京大会を前にして3大会。けがをしにくい体をつくるため、内転筋や尻の筋肉を鍛え、食生活も脂質を控えてタンパク質を増やすなど改善してきた。「膝は本当にやらなくなった。一気に変わった」と自信を示す。

コンディションを維持した一方で、結果には満足できなかった。準々決勝で王者テディ・リネール(フランス)に敗れた5月の世界選手権を含めて優勝はなし。「とにかくきつかった。改善の余地がなかった」と苦しかった日々を明かす。3月の国際大会で完璧に決まったと思った大内刈りを返されて敗れ、そこから迷い始めたという。

リネール戦では次第に手数が減り、延長戦の末に指導三つで反則負け。「悪い癖で、考え過ぎて動きが止まった」。今となれば、頭を下げずに胸を張って前へ圧力をかけ続けることを「貫くべきだった」と感じる。当時は技を出せなくなった原因が分からなかった。「どう直せばいいのか」。壁にぶつかって一人でもがき続けた。

不振を抜け出すきっかけは8月のワールドマスターズ。準々決勝で21年東京五輪銀メダルのグラム・トゥシシビリ(ジョージア)に先に技ありを奪われ、「あれで硬くなっていた気持ちが和らいだ」。そこから無心で戦って逆転の一本勝ち。3位に終わったが、大会後に五輪代表に選ばれた。

苦しみ抜いて、理想の心持ちに気づけた。今はそれを言葉にできる。試合前はこれまで通りに不安要素を練習で克服し、「ものすごく考えて繊細にならないといけない」。試合になれば「考えることを一切やめる。やってきたことは絶対に身についているのだから」。

来夏に迫る五輪へ静かに闘志を燃やす。「もっとこうしておけばよかったなとか、そういう気持ちを残さないで、やることは全てやったという気持ちで挑みたい」。迷いの消えた表情でそう言った。

【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える柔道男子100キロ超級パリ五輪代表の斉藤立=7日、東京都多摩市 〔写真説明〕練習する柔道男子100キロ超級パリ五輪代表の斉藤立=7日、東京都多摩市

2023年11月27日 14時36分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース