国土交通省が16日発表した基準地価の商業地では、政府が後押しする半導体工場の進出地域が前年に続き上昇をけん引した。北海道千歳市などでマンションやオフィスの建設ニーズが続いている。都心部では駅周辺の再開発事業も活況を呈しており、国内外からの積極的な投資資金流入を背景に地価が押し上げられている。
全国の商業地で上昇率が大きかった上位1~3位は、次世代半導体の国産化を目指すラピダス(東京)が工場を建設した北海道千歳市内の調査対象地点が独占。それぞれ前年比約3割増と伸び率を拡大した。もともと自衛隊の基地や新千歳空港があるため地価は堅調だったが、賃貸マンション用地や関連企業の事務所、ホテル、店舗用地関連の不動産取引が活発になっている。
一方、熊本県では、前年は半導体受託製造大手、台湾積体電路製造(TSMC)の工場がある菊陽町と、隣接する大津町で上昇率トップ10の半数を占めたが、今回は圏外となった。ただ、伸び率は縮小しても、地価の上昇基調は維持。トランプ米政権が半導体産業に米国内への工場誘致を強く迫っているが、不動産大手関係者は「多少の波はあっても、半導体分野の設備投資は続く」との見方を示す。
今回の地価調査では都心部を中心に再開発事業などが進む地域での上昇も大きかった。東京では、東京駅や訪日客が多い浅草駅周辺、大阪市などではホテルやオフィスのほか、マンション建設への期待が高く、海外勢も含む旺盛な投資意欲が競争を招き地価を押し上げる。
ただ、再開発事業の今後の動向には警戒感も出ている。不動産市況に詳しいライフルホームズ総研の中山登志朗チーフアナリストは、「建設現場の人手不足は深刻だ」と指摘。資材価格に加え人件費の高騰が重荷となり、既に一部の再開発計画が見直しになったり、建設事業者が決まらない案件も出たりしている。同氏は「これらの課題を解決する方策を見いだすことができなければ、再開発(の勢い)は続かない」と語る。
〔写真説明〕ラピダスの最先端半導体工場=7月、北海道千歳市
〔写真説明〕東京駅と丸の内・大手町・八重洲の高層ビル=6月、東京都千代田区・中央区
2025年09月17日 07時12分