【ワシントン時事】9月の米雇用統計が20日、政府機関の一部閉鎖解除を受けてようやく公表された。非農業部門就業者数の増加は予想の2倍超と、労働市場の底堅さを示した。しかし、当初の公表予定は10月初めで、情報の古さは否めない。連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を左右する物価統計の発表見通しは依然不透明で、次回12月の会合で金利を引き下げるか維持するか、政策決定を巡る霧は晴れない。
「米経済が引き続き強いことを示した」。レビット大統領報道官は20日の記者会見で、就業者数が前月比11万9000人増と、市場予想(5万人増)を大きく上回ったことを「トランプ大統領の成長促進策によるものだ」と主張した。
だが、雇用統計の詳細を見ると、強弱入り交じる内容だ。7、8月の就業者数の伸びは合計で3万3000人下方修正。9月の失業率も0.1ポイント上昇の4.4%と、2021年以来約4年ぶりの高水準となった。クリーブランド連邦準備銀行のハマック総裁は20日、米テレビに出演し「労働市場が一段と鈍化する予想と一致している」と指摘した。
雇用悪化リスクが強まる一方、「トランプ関税」の影響もあってインフレ加速も懸念されている。FRBは雇用とインフレの両リスクをにらみつつ、「経済指標などに基づいた政策判断を続ける」(ジェファーソン副議長)方針だ。
しかし、政府閉鎖の影響で、10月の雇用統計は発表が中止され、11月分もFRBの12月会合後に延期された。肝心の消費者物価指数に至っては、新たな発表日時すらまだ不明だ。
民間発表の統計は、雇用関連が多い一方、物価関連は非常に少ないのが実情。フィラデルフィア連銀のポールソン総裁は20日の講演で「特に物価関連では、政府発表の代替となるような良い指標はない」と述べた。当面は入手可能な指標と企業調査による手探りの政策運営が続きそうだ。
2025年11月21日 20時31分
economy