
米イスラエルのイラン攻撃から1カ月がたち、暮らしへの影響が明らかになってきた。ホルムズ海峡の実質封鎖に伴う原油価格の高騰が、食品など幅広い分野で値上げを招き、家計の負担増加につながると懸念される。農業や銭湯、公共交通にも大きな打撃を与えており、事業停止や廃業に追い込まれかねない状況だ。
原油はガソリンや灯油、軽油、重油に精製され、動力源や熱源として利用される。ナフサにすればプラスチック製品などの原料になる。これらの総称が石油で、幅広い業種で欠くことのできない「産業の血液」だ。
「すごい数字。今までにない上がり方だ」。ボイラーに使う重油の値上がりに、大阪府の銭湯業界の団体幹部は困惑している。4月前半の価格は、前月後半に比べて4割上昇する見通し。大阪市の銭湯経営者は「手に入るうちはまだ良い。供給が止まれば営業できなくなる」と不安を隠さない。
クリーニングへの影響も大きい。衣類の乾燥に必要なボイラーに重油などを使うほか、ドライクリーニングの溶剤やハンガー、包装袋のすべてが石油を原料とする。ある化学品メーカーは溶剤の原料確保に不安を募らせ、「4月以降は納品できるか見通せない」という。販売価格も「以前より15%ほど上がる可能性がある」と説明した。
2022年に起きたロシアのウクライナ侵攻で値上げラッシュに見舞われた食品にも、再びコスト上昇の波が押し寄せる。スーパー・外食業界は、包装用のプラスチック容器の値上がりや供給不足も懸念する。
トマトのハウス栽培に重油と灯油を使う池田農園(熊本県八代市)の池田将宏代表は、暖房回数を6~7割に減らしてしのいでいる。1袋3000円の肥料は、輸送コストの上昇などで4月に3800円ほどに値上げされる。「3カ月分を月内に(前倒しで)買うかもしれない。本当に厳しい」と嘆いた。
運送業界では、これまで大口購入によって軽油を安く調達していた会社が、十分な量の供給を受けられなくなったケースも。不足分は街中の給油所で調達するが、差額は転嫁できない。公営バスの軽油調達で入札が不調となる例も相次ぎ、京都市交通局は「何とか確保しなければ、市民生活に大変な影響を与えてしまう」と心配する。
政府は、石油製品に補助金を出して価格抑制に努めている。石油の供給不安の解消に向け、備蓄の放出も始めた。国際エネルギー機関(IEA)は20日、在宅勤務などの省エネ実施を呼び掛けたが、経済産業省の担当者は「まさにこういう時のために備蓄してきたので、現時点では考えていない」と話している。
〔写真説明〕大阪市の銭湯のボイラー設備。燃料の重油は4月から価格が跳ね上がるという=25日、同市
2026年03月28日 07時08分