
米国とイランが2週間の停戦に合意したことを受け、原油供給不足への不安は一時よりも後退した。ただ、合意が戦闘終結につながるかは依然不透明で、原油価格は米イスラエルによるイラン攻撃前の水準を大きく上回ったままだ。物価押し上げ圧力は当面続く見通しで、景気減速懸念は拭えない。
米原油先物価格は一時1バレル=110ドル台半ばを超えていたが、8日の合意発表直後には90ドル台前半に急落。イランが原油輸送の要衝ホルムズ海峡の通航容認を表明したことで、供給制約緩和への期待が広がった。
ただ、イスラエルがその後にレバノンを攻撃。イランが同海峡を再封鎖したとの報道もあり、原油先物は90ドル台後半に反発。合意の実効性に疑念が生じており、攻撃前の60ドル台と比べ、高水準にとどまる。
被害を受けた中東のエネルギー関連施設復旧に時間を要することなどから、仮に戦闘が終結しても価格が「すぐに戦争前の水準まで低下することは困難」(みずほ証券)との見方は多い。
第一ライフ資産運用経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、高値でも石油関連の原料や素材を前もって確保しようとする企業の動きが広範に見られると指摘。コスト上昇分の価格転嫁は3~9カ月の時間差で進むとして「少なくとも2026年末までは物価上昇の波は続く」と分析する。
東京商工リサーチが停戦合意前に国内企業7000社強を対象に行った調査では、8割弱が原材料高騰や調達難で「マイナスの影響がある」と回答した。特に価格転嫁が相対的に遅い中小企業にとってボディーブローのように経営の重しとなり、賃上げの勢いを鈍らせる恐れもある。
政府は原油の代替調達を急ぐが、課題も多い。紅海ルートにはイエメンの親イラン武装組織フーシ派に攻撃される危険があるほか、米国産原油は中東産の重質油に対応した設備では精製が進まない可能性もある。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「原油調達は依然として不確実だ」と強調。「日本経済の大きな下振れリスクだ」と指摘した。
〔写真説明〕事実上封鎖される前のホルムズ海峡を通過する貨物船やタンカー=2月25日、アラブ首長国連邦(UAE)東部フジャイラ沖(AFP時事)
2026年04月10日 12時29分