【北京時事】中国の習近平政権は、インド亡命中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の後継問題に神経をとがらせている。後継者選出を通じ、チベット亡命政府の影響力が国内で強まることが考えられるためだ。チベット族が多数を占めるチベット自治区などの地域が不安定化するのを防ぐため、締め付けを強化するとみられる。
中国外務省の毛寧報道局長は2日の記者会見で、ダライ・ラマの後継者について「国内で探し、政府が認定する」と強調。「宗教は国家や社会環境に合わせる必要がある」と、ダライ・ラマ側をけん制した。
中国政府はダライ・ラマを「分裂主義者」と敵視し、求心力低下を図っている。1989年にチベット仏教第2位のパンチェン・ラマ10世が死去した際には、ダライ・ラマが指名した少年に対抗。独自に選んだ少年をパンチェン・ラマ11世として即位させた。ダライ・ラマが指名した少年の行方は今も分かっていない。
2007年には、チベット仏教の「輪廻(りんね)転生」に関する管理法を施行。政府による認定や、外国勢力の排除を明記した。チベット族に対する弾圧も続いている。しかし、あるチベット族の男性は「ダライ・ラマが選ぶ後継者を尊重する」と打ち明ける。
今年は、チベット自治区成立60年に当たる。習政権は共産党の指導による経済発展をアピールする一方で、引き締めも強めている。習氏は6月、政府認定のパンチェン・ラマ11世と面会し、宗教を統制下に置く「宗教の中国化」を要求。警察・司法を統括する党中央政法委員会トップの陳文清書記もチベット族が多く住む青海省を視察し、「チベット分裂の動きに断固勝利する」と訴えた。
中国の少数民族政策に詳しい金牧功大・慶応大非常勤講師は「中国政府は、政府認定のパンチェン・ラマ11世や独自に選ぶダライ・ラマ後継者の権威を高めるため、チベット族への教育、宣伝を強化するだろう」と話す。
〔写真説明〕中国チベット自治区ラサにあるポタラ宮の広場に掲げられた習近平国家主席の肖像=3月28日(EPA時事)
2025年07月03日 07時07分