
中学校や高校で無抵抗の生徒を暴行する動画が、SNSで拡散される事案が相次いでいる。「自業自得だ」と加害者を非難し、自宅住所などを調べてさらす投稿も見られる。ただ、他人の個人情報などの拡散は、法的責任を問われる場合があり、専門家は「加害者をネット上で一方的に責める行為は私刑と変わらない」と、安易な「制裁」に警鐘を鳴らす。
SNSやインターネットの問題に詳しい清水陽平弁護士によると、個人を映した動画を無断で拡散したり、住所や電話番号を投稿したりする行為は民事上の問題が多い。私生活に関する情報を保護する「プライバシー権」、安全な生活を営む「平穏生活権」などを侵害する恐れがあるためだ。住む場所などの情報の拡散は家族の生活まで脅かしかねず、訴訟になれば損害賠償を命じられかねない。
暴行動画の加害者に成り済まし、「俺に文句あるやつは直接来い」などとうその情報が発信されることもある。こうしたケースは、侮辱罪や名誉毀損(きそん)罪などで刑事罰に問われる可能性もあるという。
SNS上で加害者の氏名や顔写真を特定する「犯人捜し」の結果、誤った情報が拡散され、無実の人が誹謗(ひぼう)中傷された事例もある。
2019年、茨城県守谷市の高速道路で起きたあおり運転事件では、容疑者の車の同乗者に似ているとして、無関係の女性の画像がネット上で拡散された。東京地裁は20年、女性の名誉を傷つけたとして、画像を投稿した元愛知県豊田市議に33万円の損害賠償を命じた。
清水弁護士は「民事上の責任が生じる可能性を踏まえ、一人ひとりがSNSに関するリテラシーを高める必要がある」と冷静な対応を呼び掛けている。
〔写真説明〕SNSで拡散される「暴行動画」に専門家は警鐘を鳴らしている(写真はイメージ)
2026年02月22日 09時24分