
約800年前に太陽表面の爆発(フレア)が引き起こした高エネルギー粒子の放出(太陽プロトン現象=SPE)の詳細が、鎌倉時代の歌人藤原定家が書き残した日記「明月記」の記述を手掛かりに、樹木の年輪に残されていた炭素の同位体(炭素14)の高精度分析で明らかになった。沖縄科学技術大学院大と国文学研究資料館などの研究チームが10日、日本学士院の学術誌に発表した。
SPEは、人工衛星の故障や宇宙飛行士の被ばくを引き起こす恐れがあり、「宇宙の嵐」と呼ばれる。予測の高精度化が求められているが、過去50年程度の観測データでは、より大規模なSPEの頻度や条件などが十分に分かっていない。
沖縄科技大の宮原ひろ子准教授らは、SPEが地球に到達すると、大気と反応して通常の炭素より中性子が2個多い炭素14を生成し、樹木が光合成で取り込むことに着目。年輪から時期も特定できるため、青森県北部で発掘されたアスナロの年輪を使い、SPEの発生時期と規模を詳しく調べることにした。
しかし、高精度の炭素14分析は時間がかかり、何百年もの期間を調べるのは難しい。そこで、国文学研究資料館がデジタル化を進める明月記など国内外の古典籍から、太陽活動の活発化と関連するオーロラなどの記述を見つけ、その前後の時期に絞った。
その結果、定家が赤いオーロラを記録した1204年2月に近い、1200年冬から翌春に大規模なSPE発生を示す、急激な炭素14濃度の上昇を検出。人類が直接観測した中で最大の1956年2月のSPEより10倍以上大きいと推定された。
〔写真説明〕鎌倉時代の歌人、藤原定家の日記「明月記」。左側のページに、空に赤い光が見えたという記述がある(国立公文書館提供)
〔写真説明〕北海道遠軽町の上空に現れた赤いオーロラ(中山智博さん提供)
2026年04月10日 12時36分