生活保護の処方薬を若者らに=制度悪用、2万錠を無料入手―チェック行き届かず



薬のオーバードーズ(過剰摂取)が社会問題化する中、少女に睡眠薬などを無許可で譲渡したとして、生活保護を受給していた無職の男(40)が5月、大阪府警に逮捕された。男は保護制度を悪用して2万錠もの薬を無料で入手し、若者らに配っていたとされる。国や自治体は受給者への「過剰処方」を防ごうと対策を進めているが、医療関係者はチェックが行き届いていないケースがあると指摘する。

「薬屋さん」。大阪・道頓堀にある大型広告「グリコサイン」近くの「グリ下」と呼ばれる一帯で、男は若者らからこう呼ばれていた。ここで男と知り合った女子中高生2人は睡眠薬など60錠を譲り受けて一気に飲み、電車内で昏睡(こんすい)状態だったところを保護された。

医薬品医療機器法違反などの疑いで逮捕された男は「人生に悩んでいる子や薬の依存症を自覚していない子にあげていた。ボランティア精神だった」と供述。2024年2月以降、睡眠薬や向精神薬など約2万錠を一つの医療機関から無料で処方されていたという。

厚生労働省によると、経済的困窮による受診控えを防ぐため、受給者の医療費は原則公費負担となっている。一方、受給者による薬の大量入手事件などが相次ぎ、同省や自治体は10年以降、過剰処方の対策を進めている。

レセプト(診療報酬明細書)の点検体制を強化し、複数の医療機関から向精神薬を処方された「重複投薬」の受給者への指導を実施。23年度の対象者は約2700人で、年々減少傾向にあるという。

同省担当者は「多くの患者は治療目的だが、一部は転売目的の可能性がある」と話す。同年度からは、向精神薬以外の重複投薬に加え、同じ月に15種類以上の薬を処方された「多剤投与」の受給者にも指導対象を拡大している。

過剰処方について、早稲田メンタルクリニック(東京)の益田裕介院長は「患者が受付に居座ったり、『口コミで低評価を付ける』などと脅したりして処方させる場合や、経営難の医療機関が多量の薬を求める患者を受け入れている場合がある」と指摘する。

レセプトは処方から情報反映までに時間がかかるとし、「処方履歴をその場で参照できる『電子処方箋』を導入していない医療機関がまだ多い。普及が進めば対策につながるのではないか」と話した。

〔写真説明〕少女に睡眠薬などを不法譲渡したとして逮捕された男の自宅にあった大量の医薬品=5月29日、大阪市中央区

2026年07月27日 07時03分


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