陸上の世界選手権東京大会男子110メートル障害で16日、村竹ラシッド(JAL)が13秒18で昨夏のパリ五輪に続き5位に入った。2年前の世界選手権でも泉谷駿介(住友電工)が5位。日本の競技力が低く、長らく「世界から最も遠い」とされていた同種目は近年、進境が著しい。複数選手が五輪や世界選手権で表彰台が狙えるほどの「お家芸」になりつつある。
日本陸連の強化戦略が実り、スプリント能力の高い選手が増えたことが背景にある。陸連の山崎一彦強化委員長によると、約10年前から国際規格に合わせ、20歳未満のレースでのハードルの高さを一般規格の106.7センチから99.1センチに下げたことが一つの転機だ。
身長が低くても、短距離が得意な選手が挑戦しやすくなった。敷居を下げ、世界と勝負するために必要なスピードを体感させる。やがて、泉谷、村竹らハードル間を素早く刻める「タレント」が次々と出てきた。
レースパターンの変化も大きい。日本ではスタートから1台目まで8歩が一般的だったが、海外の強豪と同じ7歩でこなせる選手が増えた。前半は余裕を持って競り合い、後半で減速を抑えて勝負できるようにもなった。山崎委員長は「最後まで外国選手と同じ流れで走れることが、優勝やメダル獲得のポイント」と指摘する。
アリス・メリット(米国)が持つ12秒80の世界記録は13年間更新されていない。上手にスピードを制御しながら10台のハードルをクリアする必要があるこの種目の特性を踏まえ、山崎委員長は「人間の限界は(今の世界記録と)近いところにあるかもしれない。日本にとってチャンス」。村竹が8月に出した日本記録は12秒92。いつの日か、日本選手が頂点に立つ可能性も想像させる。
【時事通信社】
〔写真説明〕男子110メートル障害決勝でゴールする村竹ラシッド=16日、東京・国立競技場
〔写真説明〕男子110メートル障害決勝でゴールした村竹ラシッド(右)=16日、東京・国立競技場
〔写真説明〕男子110メートル障害決勝を終え、日の丸を掲げる村竹ラシッド=16日、東京・国立競技場
2025年09月17日 14時30分