
四大大会シングルスの優勝者が全て異なった2025年の女子テニス。多くの選手が主役の座を狙う中、元世界ランキング1位の大坂なおみ(フリー)は、復活を強く印象付けた。
夏の全米オープンの前哨戦、ナショナルバンク・オープンで準優勝。全米では、23年の女児出産から復帰後初めて四大大会で3回戦を突破し、4強入りした。技術や体力面に限らず、心の成長もにじんだ。
モントリオールで開催されたナショナルバンク・オープンの決勝は当時18歳のビクトリア・エムボコ(カナダ)と顔を合わせた。第1セットを先取しながら、自国の観客の声援を受けた相手の勢いにのまれて逆転負け。21年全豪オープン以来となるツアー制覇には届かなかった。
試合後の表彰式。大坂は準優勝者として「あまり時間を取りたくない」と言い、チームや大会関係者への感謝を述べる程度にとどめ、記者会見には出なかった。後に本人も自覚しているように、せめてエムボコをたたえる言葉は発するべきだった。
全米の準決勝も、共通する点があった。相手は勢いに乗っていた地元米国のアマンダ・アニシモバで、この試合も第1セットを奪ったものの逆転された。ただ、敗戦後の姿は対照的だった。「もっと練習して、さらに良くなりたいと思わせてくれるので励みになる」と記者会見で語り、勝者への賛辞も忘れなかった。
元女王は、最後まで勝ち切れないはがゆさを受け止め、消化しながら本来の強さを取り戻しつつある。約3時間の激闘の末にあと一歩で全米決勝の切符を逃しても、前向きに敗戦を受け入れた。その姿勢が来季の飛躍を予感させた。
【時事通信社】
〔写真説明〕全米オープン女子シングルス準決勝で敗れ、コートを去る大坂なおみ=9月4日、米ニューヨーク(AFP時事)
〔写真説明〕試合後の表彰式でマイクの前に立つ準優勝の大坂なおみ=8月7日、カナダ・モントリオール(AFP時事)
2025年12月23日 07時09分