
大相撲で歴代最多45度の優勝を誇る元横綱白鵬が6月に日本相撲協会を退職した。師匠を務めていた宮城野部屋は、弟子の暴力事案を受けて2024年3月にいったん閉鎖となり、力士らと共に伊勢ケ浜部屋に転籍。地道に指導に励んだ。
その後、相撲協会は、同じ一門の理事を通じて閉鎖解除への道筋を示し、周囲も慰留したものの決心は揺るがず。「弟子たちへの愛情は変わっていない。横綱、大関になる姿を見たいというのはあった」と名残惜しそうにしながら、世界的な相撲普及という志を優先して新たな道を選択した。
一方、残された弟子たちは環境の変化に対応して稽古を積んでいる。元白鵬の弟子として角界入りした伯桜鵬改め伯乃富士は複雑な心境も口にし、「憧れの人だった。強くなるしかないぞと言われた」と別れを振り返った。
指導を直接受ける機会は失われたが、伯乃富士は期待に応えるように出世し、自己最高位を東前頭筆頭まで更新した。躍進の要因は、元白鵬が退職した6月に伊勢ケ浜部屋を継承した元横綱照ノ富士が目を光らせ、熱海富士や錦富士ら多士済々の関取衆との稽古で実力を磨いたからと言える。
師匠の元照ノ富士は、特別扱いをしないという方針を掲げる。周囲からの信頼も厚い。「自分の弟子。みんなに愛情を持ってアドバイスする」と力強く言った。自身は間垣部屋の閉鎖に伴って伊勢ケ浜部屋に移ると、横綱日馬富士らの胸を借りて鍛えられた。環境の変化に対応し、両膝のけがなどに苦しみながら番付の頂点を極めていく中、そういったつらさも身に染みている。
元白鵬の下から移ったある力士は、元照ノ富士が「俺はお前たちの気持ちが分かるからと言ってくれた。思ってくれている」と感謝した。分け隔てなく厳しく接しつつ、情をかけるきめ細やかさもある。「師匠として(弟子に対して)好き嫌いがあったら駄目」と元照ノ富士。元白鵬の弟子だった力士たちは道に迷わず、成長を続けている。
【時事通信社】
〔写真説明〕日本相撲協会を退職し、記者会見する元横綱の白鵬翔さん=6月9日、東京都千代田区
〔写真説明〕指導する元横綱照ノ富士の伊勢ケ浜親方(中央)=6月18日、堺市内
2025年12月24日 07時06分