ロシアのウクライナ侵攻を巡り、「ディール(取引)」による戦闘終結を豪語するトランプ米大統領が再就任し、停戦のシナリオが盛んに報じられている。侵攻開始から2月で丸3年を迎え、水面下で交渉が試みられている可能性があるが、条件に関して各国の思惑は交錯。早期解決は困難とみられる。
◇「ロシア利する」
「100日以内の停戦はあり得ない」。ウクライナのイェルマーク大統領府長官は26日、自国メディアが報じた「トランプ停戦案」にコメントした。報道によると▽1月末~2月初めに米ロ首脳電話会談▽2~3月にウクライナを含む3カ国首脳会談▽4月の復活祭(イースター)に合わせた停戦―がうたわれているが、イェルマーク氏はロシアを利する情報戦だと一蹴した。
報道が大きく取り上げられたのは、トランプ政権のケロッグ特使(ウクライナ・ロシア担当)が大統領就任後100日以内の停戦を目指すと語っているためだ。
ウクライナのゼレンスキー政権は1月下旬、約1年半前の反転攻勢で足掛かりとした東部ドネツク州ベリカノボシルカから撤兵した。戦場で劣勢が続いており、交渉で不利な条件をのまされるという懸念が強い。
トランプ政権が支援に積極的でない中、ウクライナの継戦能力には限界も見える。現地メディアは27日、国防省情報総局のブダノフ長官が議会に対し「夏までに本格的な交渉に入らなければ、国家存続の危機に陥る」と説明したと報道。波紋は広がり、情報総局が火消しを図る事態となった。
◇交渉まで時間も
交渉について、ルビオ米国務長官は「持続可能な形で戦争を終わらせることに取り組む。2~4年後の再燃は望まない」とCBSテレビの番組で述べた。しかし、あくまでウクライナの「非武装化」「中立化」を突き付けるロシアに対し、ゼレンスキー大統領は北大西洋条約機構(NATO)加盟国部隊を駐留させてさらなる侵略を防ぎたい考えで、条件を巡る隔たりは大きい。
ロシアのペスコフ大統領報道官は27日、「米国からシグナルを受けていない。(会談まで)ある程度時間を要するようだ」と過熱する報道をけん制。ウクライナ側も対ロ交渉を禁止する大統領令を取り下げていない。
【時事通信社】
〔写真説明〕トランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=2024年9月、ニューヨーク(ウクライナ大統領府提供)(EPA時事)
2025年01月30日 12時32分