【ワシントン時事】トランプ米政権は28日、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の「完全な非核化」を目指すと表明した。トランプ大統領は得意の「トップ外交」を通じ、対話再開を図る可能性があるが、1期目から国際情勢が様変わりする中、北朝鮮が応じるかは不透明だ。
米国家安全保障会議(NSC)報道官は28日、時事通信の取材に対し、「1期目で行ったように、トランプ大統領は北朝鮮の完全な非核化を追求する」との立場を示した。第2次トランプ政権発足後、北朝鮮の非核化を目指す姿勢を打ち出したのは初めて。
トランプ氏は1期目に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と3度会談した。だが、2019年2月にハノイでの首脳会談で非核化の進め方を巡って協議が決裂。対決姿勢に転じた北朝鮮は核抑止力強化を進め、バイデン前政権の対話の呼び掛けに一切応じなかった。
一方、トランプ氏は大統領選の最中から正恩氏との良好な関係を誇示してきた。NSC報道官も、18年6月のシンガポールでの初会談を念頭に「(トランプ氏の)力強さと外交の組み合わせが、完全な非核化に向けた指導者レベルで初となる約束へと導いた」と指摘した。
ただ、中国やロシアの協力を得て対北朝鮮圧力を強めた1期目と現状は大きく異なる。北朝鮮はウクライナに侵攻するロシアに1万人以上の兵士を送り、軍事協力を深化。24年10月には固体燃料式の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星19」を発射し、ミサイル能力も大幅に向上させている。
バイデン前政権は日本や韓国との安全保障面での協力を深め、北朝鮮の脅威に対抗した。しかし、ルビオ国務長官はロ朝軍事協力を念頭に「政策全般を真剣に検証すべきだ」と語り、対北朝鮮外交の根本的見直しを図るべきだとの考えを示す。
トランプ氏は就任後、歴代政権の見解を踏襲せずに北朝鮮を「核保有国」と表現した。北朝鮮が核戦力を制限する代わりに米国が制裁緩和に応じる軍備管理交渉を通じ、日韓の頭越しに「ディール(取引)」を交わす可能性も取り沙汰されている。
【時事通信社】
〔写真説明〕トランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(AFP時事)
2025年01月30日 12時32分