旧民主「共闘」に隙間風=国民本部へ不満渦巻く―参院滋賀選挙区ルポ【注目区を行く】



参院滋賀選挙区では源流を同じくする立憲民主、国民民主両党が「共闘」し、自民党などと改選1議席を巡る争いを繰り広げる。だが、候補者を国民民主の新人に一本化する過程で同党本部への不満が拡大。双方の間には隙間風が吹く。自民はこれをチャンスと捉える。(敬称略)

◇兄弟政党

「民主党にルーツを持つ『兄弟政党』が与党に戦いを挑む。新しい政党にできない変革を起こす」。参院選が公示された3日朝のJR大津駅前。出馬を取りやめた立民県議の佐口佳恵は、国民民主が擁立した中小企業診断士堀江明の街頭演説に駆け付け、こう訴えた。しかし、集まった人はまばら。立民関係者の姿も、佐口を除けばほとんど見られなかった。

堀江の選対本部は国民民主県連と連合滋賀で構成され、立民のメンバーはいない。陣営によると、立民側にも参加を呼び掛けたが、誰も応じなかった。国民民主関係者は「候補を降ろしてもらって申し訳ない気持ちもあり、強く頼みづらかった」と言葉少なに語る。

今回、立民県連は堀江「支持」を組織として決めたが、事は単純ではない。「国民民主に譲るなら、自民に入れさせてもらう」。立民の自治体議員の一人は支援者からこう通告された。

民主党の後継の民進党から枝分かれした立民と国民民主が今の形に落ち着いたのは2020年秋。5年たち、相互に不信感もある。この議員は「支援者の気持ちは分かる。謝って回るしかない」とため息をついた。

◇高飛車

参院選に向け、立民は昨年12月に佐口を、国民民主は今年2月に堀江を擁立するとそれぞれ発表した。ただ、複数の関係筋によれば、堀江に一本化する方針は3月ごろまでに両党と連合の地元組織の中で共有されていた。

連合サイドは早くから両党の本部に調整を働き掛けたが、具体的な動きは見えなかった。連合滋賀の幹部は、国民民主代表の玉木雄一郎らが昨秋の衆院選での躍進を背景に、立民に頭を下げに行くのを嫌ったためだと指摘。「高飛車な対応だった」と振り返る。

結局、立民が「大人の対応」(連合関係者)をしたことで6月17日に佐口の出馬見送りが決まったが、この時点で参院選公示まで2週間余り。堀江選対は「滋賀の有権者は『与党かそれ以外か』の戦いに慣れている。もう少し早ければ」と悔やむことになった。

「股裂きを避けるため今回は1人に絞ったが、共闘はもう難しいかもしれない」。連合滋賀幹部はこう嘆息した。

◇ほくそ笑む自民

一方の自民は元守山市長の新人宮本和宏を立て、公明党の推薦を得た。陣営幹部は、立・国の足並みの乱れや一本化の遅れを「元気の出る話」と正直に話す。街頭演説より支援者を集めた屋内の集会を重視し、組織固めを急ぐ。

選挙の構図は6年前の19年から一変した。この時は知事経験者の嘉田由紀子が無所属の野党統一候補となり、事実上の与野党一騎打ちを制した。

今回は、日本維新の会にその後合流した嘉田が比例代表に回り、維新は選挙区に新人を擁立した。新たに候補を立てた参政党は全国規模で存在感を高める。共産党も独自候補を出し、乱戦模様となっている。

「立・国に維新まで一枚になったら、うちは厳しかった」。自民県連関係者はこう語る。



◇参院滋賀選挙区立候補者 佐藤

耕平

43

党県委員







共新 中田

あい

46

自営業









参新 宮本

和宏

53

元守山市長





自新































推(公) 堀江





38

中小企業診断士

国新 岡屋

京佑

32

元中日新聞記者

維新 菅原

良雄

47

警備員









諸新 藤井

隆一

60

元教員









諸新 (注)敬称略、届け出順。年齢は投開票日(20日)時点。共=共産党、参=参政党、自=自民党、公=公明党、国=国民民主党、維=日本維新の会、諸=諸派、新=新人、推=推薦。

【時事通信社】 〔写真説明〕参院選滋賀選挙区に立候補した国民民主党候補の第一声を聴く有権者ら=3日、大津市

2025年07月09日 07時38分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース