改選数1の福島選挙区は、4選を目指す自民党現職の森雅子に立憲民主党の新人石原洋三郎が挑む事実上の一騎打ちの構図だ。所属していた安倍派の裏金事件に関係した森は、依然として厳しい視線にさらされる。立民は東北地方の「天王山」とみて、党を挙げて攻勢をかける。(敬称略)
◇封印
「福島の復興こそ日本を再生させる」。森は公示日の3日、福島市で第一声を上げ、2026年度から5年間の東日本大震災復興費の福島県分として1兆6000億円程度を確保したことをアピールした。
裏金事件にはじかに触れない。選挙戦のスタートに合わせ、「過去の話をしても票は増えない」(選対幹部)と封印した。
当選1回だった12年、第2次安倍内閣に少子化担当相として初入閣。その後、法相も務めた。6年前の改選時は10万票差をつけた。
だが、安倍派パーティー券収入の政治資金収支報告書不記載が発覚すると、取り巻く環境は一変。支援者にも追及を受け、「政治家として隙があった」「政倫審で弁明した」と釈明に追われた。地元事務所では今も非難の電話が鳴る。苦戦を見越し、街頭活動や企業回りを増やしてきた。
森が出身地のいわき市で公示日に開催した決起集会。上司に参加を指示された建設業の若手社員は「親から裏金議員だと聞いた。カネのことはきれいにしてほしい」と話し、足早に立ち去った。700人超が会場を埋めたものの、頼みの組織も盤石ではない。
◇四重苦
公明党は推薦を出さず、「心情的支援」にとどめた。森が票田の福島、郡山、いわき3市で3日に立て続けに開いた演説会に、公明とその支持母体・創価学会は組織的な動員をかけなかった。
公示直前、共産党が独自候補の擁立を見送り、石原を推すと発表した。国民民主党は当初から立てておらず、森陣営は「衝撃だ」と語る。昨秋の衆院選比例代表で立民、国民、共産3党が得た票を足すと、自公を上回る。
都市部では参政党新人の大山里幸子が自民票に一定程度食い込むとの見方が強い。「三重苦、四重苦だ」。自民県連幹部は悲壮感を漂わせた。
◇総力戦
「私よりピュアだった。(自民で無理して)どんどん違う方向に行ってしまった」。7日、いわき市に乗り込んだ立民元代表の枝野幸男は街頭に立ち、森と裏金事件に言及した。2人は東北大の同級生。皮肉を込め、「友人として(落選させて)楽にしてあげてほしい」と呼び掛けた。
立民は元財務相の安住淳や代表代行の大串博志らも連日現地入り。「裏金議員を落として」「反省ゼロ」などと強調した。
石原は福島知事だった祖父以来の政治家一家の生まれ。自身も衆院議員を務めたが、地盤は福島市に限られる。応援に入った幹事長小川淳也は「SNSの発信が不十分」と改善を命じた。
東北6県のうち自民が直近2回の参院選で連勝できたのは福島だけ。全敗に追い込みたい野党側としては最重点区となる。
共産書記局長の小池晃は4日、福島駅前で演説。「自民の議席を減らすための1票だ」と石原への投票を訴えた。ただ、石原本人とは並ばない。県政では立・国などが「非自民・非共産」の枠組みを保つ。「『立憲共産党』と攻撃される材料はつくりたくない」との立民の意向に配慮した。
◇参院福島選挙区立候補者
大山
里幸子
51
会社役員
参新
越智
寛之
51
会社役員
諸新
森
雅子
60
元法相
自現(3)
石原
洋三郎
52
元衆院議員
立新
遠藤
雄大
40
元福島県職員
無新
(注)敬称略、届け出順。年齢は投開票日(20日)時点。参=参政党、諸=諸派、自=自民党、立=立憲民主党、無=無所属、新=新人、現=現職。丸数字は参院当選回数。
【時事通信社】
〔写真説明〕参院選福島選挙区立候補者の街頭演説を聴く有権者ら=3日、福島市
2025年07月10日 07時14分