自民党の鶴保庸介参院予算委員長(58)が石川県・能登半島地震に関し「運がいいことに能登で地震があった」と述べ、与野党の批判を浴びた。石破政権が重視する防災と地方創生に関連した失言で、被災地の感情を逆なでしている。参院選で苦戦が伝えられる石破茂首相(自民総裁)にとって、難航する日米関税交渉に続く打撃となった。
鶴保氏は8日に和歌山市で開かれた自民候補の演説会に出席。地震を契機に「二地域居住」が進展することに期待する文脈で発言した。二地域居住は、都市と地方の双方に生活拠点を持つ暮らし方で、人口減少下の地方活性化策として政府が推進している。
鶴保氏は9日に記者会見し「被災地への配慮が足りなかった」と陳謝し、発言を撤回。離党や議員辞職は否定した。森山裕幹事長は同日、鶴保氏に電話で厳重注意した。森山氏は鹿児島市で記者会見し、「極めて不適切だ」と指摘。参院選への影響について「決してプラスにはならない」と述べた。
参院選の投開票が20日に迫る中、トランプ米大統領は日本に8月1日から25%の相互関税を課すと一方的に通告。石破内閣の支持率も低迷したままで、自民は苦しい戦いを強いられている。ある参院議員は鶴保氏の失言について「もともと厳しかったのに党全体がさらに沈みかねない」と懸念。党幹部は「相当な打撃になる」と認めた。
立憲民主党の野田佳彦代表は青森市で記者団に対し「信じられない。失言というレベルではない」と批判。共産党の田村智子委員長は岡山市で記者団に「被災者は本当に苦しんでいる」として、議員辞職を要求した。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は高松市で記者団に「能登に行って謝罪した方がいい」と促した。
公明党の斉藤鉄夫代表は札幌市で記者団に「甚だ不適切だ。被災者のことが常に心にあればあのような発言は出ない」と不快感を示した。
鶴保氏は参院和歌山選挙区選出で当選5回。3年後に改選を迎えるため、今回の参院選には立候補していない。
【時事通信社】
〔写真説明〕取材に応じる自民党の森山裕幹事長=9日午後、鹿児島市
2025年07月10日 07時12分