自民党総裁選(10月4日開票)では、5候補とも物価高に苦しむ家計の支援策を前面に打ち出した。際立っているのは所得税などの減税策だ。自民党が衆参両院で少数与党に陥る要因となった現役世代の離反を食い止めようと躍起で、7月の参院選で与党が掲げた一律の現金給付はなりを潜めた。選挙で減税を訴えてきた野党との連携を意識した結果、各候補の独自色も薄まっている。
「中低所得者の負担は大きい。この層を集中的に支援する」。高市早苗前経済安全保障担当相はこう強調し、減税と給付を組み合わせた「給付付き税額控除」を提案する。所得税額から一定額を控除し、控除をしきれなかった低所得者には、その分を現金給付する仕組みで、立憲民主党や日本維新の会、国民民主党も導入を主張。高市氏が野党との連携に秋波を送ったと目される。
小林鷹之元経済安全保障担当相も「分厚い中間層を支える」として、所得税額から一定割合を控除する「定率減税」の時限的な実施を提唱する。定率減税は、1999年に当時の小渕政権が25万円を上限に所得税額の20%相当を控除する制度を導入。小林氏は「一つの参考」にするとした。
茂木敏充前幹事長、高市氏、小泉進次郎農林水産相の3候補は、国民民主党が訴える所得税の基礎控除などの引き上げに前向きな姿勢を示す。小泉氏は「物価と賃金の上昇に合わせて基礎控除などを引き上げる仕組みを野党と協議したい」と話し、インフレによる実質賃金減少に歯止めをかける案で野党との連携を探る。
林芳正官房長官は、世帯の収入や家族構成、税金・保険料負担などに応じて給付する「日本版ユニバーサル・クレジット」導入で独自色を出す。ただ、政府内には「低中所得者支援の考え方は給付付き税額控除と同じ」との声も漏れる。茂木氏は自治体で使い道を自由に決められる数兆円規模の「生活支援地方交付金」創設を提案するが、小林氏、高市氏も現行の交付金の拡充を訴える。
野党と合意したガソリン税暫定税率の早期廃止でも各候補は足並みをそろえる。
一方、消費税減税では各候補とも野党と距離を置く。食料品に課す消費税率ゼロを主張していた高市氏も導入に時間がかかり、「即効性がない」として軌道修正した。
ただ、各候補が掲げる減税策の財源確保については「税収の上振れ」頼みの姿勢が目立ち、議論は深まっていない。積極財政派の高市氏は「物価高対策として必要があれば(赤字)国債発行もやむを得ない」とも言及。財政健全化を巡り、比較第一党としての責任を感じさせる論戦が展開されているとは言い難い。
【時事通信社】
2025年09月26日 07時05分
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