米、高関税が遠心力に=進む地盤沈下―日米合意3カ月



【ワシントン時事】日米両国が関税交渉で合意してから22日で3カ月。トランプ米政権は合意後も世界に高関税を突き付け続ける。その姿勢は「米国抜き」の貿易体制に向かう遠心力を強め、米国の地盤沈下を助長している。

「われわれは非常に大きな力を持っている。関税の力だ」。トランプ大統領は20日、ホワイトハウスで記者団にこう誇示した。

高関税を迫り、巨額の対米投資を引き出した日本との合意後も、トランプ氏は他国から有利な条件を得る手段として関税措置を次々と打ち出した。銅や木材など分野別関税の対象を拡大したほか、ロシア産原油を購入するインドには25%の追加関税を発動した。

米国の2025会計年度(24年10月~25年9月)の関税収入は、前年度の2.4倍に膨らんだ。自信を深めるトランプ氏の下、「高関税は常態化する」(元米政府高官)との見方が強い。

こうした中、欧州連合(EU)は米国以外との関係強化を急いでいる。9月にはインドネシアと包括的経済連携協定(CEPA)で正式合意。インドとも自由貿易協定(FTA)の年内締結を目指している。EU高官は「予測不能な世界経済で、貿易関係は信頼、強靱(きょうじん)性を示す戦略的な資産だ」と強調する。

北米でも変化が生じつつある。貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に準拠する製品の米国向け輸出は関税の対象外だが、米国との貿易摩擦の結果、カナダの自動車輸入先トップは6月、約30年ぶりに米国からメキシコに入れ替わった。

来年に控える協定見直しで米国が自国有利の要求を強めるのは必至。カナダとメキシコは9月の首脳会談で、貿易をはじめ幅広い分野で協調を深める28年までの共同声明をまとめ、連携強化を図った。

一方、世界貿易機関(WTO)を中心とした自由貿易体制の転換を目指す米政権は、「新たな貿易秩序の基盤を築いた」(グリア米通商代表部=USTR=代表)と、関税発動の手を緩める気配はない。新たな国際秩序が模索されつつある中、多国間協力を進める日本のかじ取りは難しさを増している。

【時事通信社】 〔写真説明〕コンテナの積み降ろしを行うクレーンが並ぶロサンゼルス港=2025年4月、米カリフォルニア州(AFP時事)

2025年10月22日 07時20分


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